新型コロナ収束のカギ握る? でも簡単じゃない「集団免疫」
「集団免疫」のメカニズムとは?
仮に、ある人が新型コロナウイルスに感染し、体内に獲得免疫を作れたとしましょう。そして、同じように獲得免疫を作れた人が増え、ある集団の中にたくさん集まったとしましょう。そうすると、ウイルスが集団に入り込む確率が低くなります。ウイルスは宿主(この場合は人)なくしては増殖できないため、ここで感染の連鎖が断ち切られます。この状態を、新型コロナウイルスに対して集団免疫を確立した状態といいます。 私たちの社会集団の中では、獲得免疫を持つことが出来ない人もいます。例えば、免疫不全の人や年齢的にワクチンをまだ打てない赤ちゃんなどが該当します。こうした人たちを守るためにも、集団免疫が必要になってきます。
「集団免疫」確立に必要な条件とは?
ここまでで免疫と集団免疫について概説してきました。 さて、ここからは集団免疫の確立に必要な条件を少しずつ見ていきましょう。実際は病原体によってケースバイケースですが、新型コロナウイルス感染症について議論する上で押さえておきたい基本的な条件を3つ紹介します。
【条件1】獲得免疫を持つことが出来るか?
実は、そもそも獲得免疫を持つこと自体が難しい病原体が数多く存在します。例えば、ウイルス性胃腸炎の原因となるノロウイルスもその一つです。デング熱の原因となるデングウイルスは、獲得免疫を持っていると逆に病状が重くなることがあるという厄介な病原体です。このような場合、安全なワクチンを作るのは非常に難しくなります。 現在、新型コロナウイルスのワクチン開発が世界中の研究者によって急ピッチで進められています。ワクチン開発にはいくつもの工程があり、通常10年以上かかることが多いのですが、新型コロナウイルスでは既に最終工程に入っているワクチンもいくつかあります(2020年9月初旬)。ただし、どれほど実用性のあるワクチンが開発できるか、まだはっきりと分かっていません。
【条件2】獲得免疫はどれくらい持続するか?
獲得免疫を持てたとしても、その持続期間が病原体によって異なります。例えば、麻疹は一生のうちに2度ワクチンを打てば獲得免疫が持続するとされています。それとは対照的に、インフルエンザは毎年ワクチンを打つ必要があります。 もし、獲得免疫の持続期間があまりに短い場合、何度もワクチンを打たなければなりません。この場合、ワクチン接種の費用もかさんでしまいますし、今回のように世界中の人が必要とするワクチンの場合、生産が追い付かなくなることも考えられます。 今のところ、新型コロナウイルスに対する獲得免疫がどれくらい持続するかを正確に確かめるデータはありません。この条件についても今後の課題といえるでしょう。