【まとめ】絶対感動!ヒューマンドラマ映画37本!
過食症の父親が娘との関係修復を願う『ザ・ホエール』
極端な状況に置かれた人物を描いた作品なのに、観ているうちに多くの人を共感させてしまう……。ヒューマンドラマの傑作は、そんな化学反応を起こすものだが、『ザ・ホエール』はその最高のサンプルと言えるだろう。主人公のチャーリーは、大学でオンラインの文学の授業を担当しているが、カメラの故障を理由に生徒たちに素顔を明かさない。彼は272kgの体重で、歩行器がなければ家の中も移動できない状態なのだ。肥満の原因は同性の恋人を亡くした悲しみと、その反動による過食。余命わずかと宣告されたチャーリーの月曜から金曜までの5日間が描かれる。 日常行動も満足にできないのに、気がつけばジャンクフードをむさぼるように食べてしまう。はっきり言って、チャーリーの状態は壮絶そのもの。しかし看護師や、突然の訪問客との交流によって、彼の本心が明らかになるにつれ、じわじわと“感情移入度”が上昇していく作りが見事だ。チャーリーが人生の最後の願いとして、元妻と離婚して以来、会っていない17歳の娘との関係を修復しようとするエピソードで、感動も頂点に達する。体重を増やし、特殊メイクも駆使した外見だけでなく、チャーリーの内なる変化を目の演技で見せきったブレンダン・フレイザーのアカデミー賞主演男優賞受賞は誰もが納得するはず。
壮絶な生い立ちの主人公に心が震える『プレシャス』
タイトルは主人公の名前。“プレシャス=貴(とうと)い”という意味とは裏腹に、彼女は16歳にして信じられないほど痛ましい運命を送っている。すでに2回も妊娠を経験。しかもその原因は父親(母の恋人)によるレイプ。失業中の母親も彼女を日常的に虐待している。読み書きさえ満足にできないが、妊娠を理由に学校は停学となり、心を開いて話ができる相手もいない。そんなプレシャスがフリースクールに通うことになり、若い女性教師との出会いによって人生の希望を見出すのが本作のストーリーだ。 1980年代、NYのハーレム。その貧困層の一家で育ち、しかも“毒母”の仕打ちが半端じゃない。不幸を一身に背負ったようなプレシャスだが、どこかしたたかで、我の強さもある彼女のキャラクターは新鮮。プレシャスの妄想の映像も挿入されて、とことん暗くなりそうなドラマにブレーキをかけるなど、構成もうまい。プレシャス役、ガボレイ・シディベの他に類をみないインパクトの強さや、本作でオスカー受賞の母親役モニークの猛演に加え、マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツらミュージシャンの意外な名演技にも心を打たれる。