ステージから科学と社会、人と地域をつなぐ――サイエンスエンターテイナー・五十嵐美樹さん
―サイエンスショーを自分だけでなく、みんなで広げていきたい考えですね。
サイエンスショーの仕方も変わってきていて、色々と犠牲にしながら取り組んでいた時期もあったのですが、今は自分も楽しむことを大事にしています。後輩たちを育てるにも、やっぱりその子たちが楽しめる環境を作っていかなければという考えや視野でいます。
もともと、1人でなんでもやってしまうタイプです。人に任せたり頼ったりするのがすごく足りなくて。でも、持続可能であることも大事だなと思うようになりました。万が一自分に何かがあったら、今取り組んでいることも止まってしまいます。挑戦はしたいので、ショーも毎回違うことに取り組んでみるとか、クリエイティブにやっていきたいと思っています。
―これからも科学と向き合う中で大切にしたいことは何ですか。
最近、日本の先人たちが大事にしてきた感性や情緒に感銘を受けています。たとえば明治期の物理学者・寺田寅彦さんは、線香花火の火花や金平糖の角の美しさに魅せられて、物理学の研究対象にされました。本来科学は普遍的なもので、世界中どこでも同じように通じるものです。しかしこの国に生まれた1人として、先人たちから受け継いだ感性や情緒を忘れないようにしたい。日本にあるものや伝統も大切にしながら、科学に向き合っていきたいなと考えています。
西尾直樹/北海道大学CoSTEPフェロー
プロフィール
五十嵐美樹(いがらし・みき) サイエンスエンターテイナー/東京都市大学教育開発機構准教授 1992年東京都生まれ。NHK高校講座「化学基礎」レギュラー出演や、「スタディサプリ」中学講座物理講師などを担当。大学で科学教育分野の教鞭を執る傍ら、踊るサイエンスショーを年間100公演以上開催し、科学を表現する活動を国内外で行っている。