ステージから科学と社会、人と地域をつなぐ――サイエンスエンターテイナー・五十嵐美樹さん
一方で、日本の存在感を世界で高められるような勝負をしていくには、突き抜けた強みを作っていく必要があると感じました。すでに世界で受け入れられている漫画やアニメなどの文化との組み合わせが突破口になると考えて、ストーリーの制作も行っています。
―科学とダンスを組み合わせた手法が評価されたことに加え、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に進む女性の割合が経済協力開発機構(OECD)加盟国でワースト1位である日本において、その課題に取り組んでいることも選出理由でした。普段からどのような問題意識を持って取り組んでいるのでしょうか。
理工系でずっと学んできた私は、男女比9対1の環境が普通だと思っていたので、日本がそんな状況にあることも最初は知らなくて。でも振り返ると、確かに科学に触れる機会はそう多くはなかった。だから私のターゲットは常に「かつての自分」。科学で感情が動いたときの経験を追体験してもらいたいと思っています。かつての自分のように、科学に関心のない子どもでもふと足を止めたくなるように、楽しそうに実験をすることはショーをやる上でも大事にしていますね。
―「かつての自分」へ届けるために工夫されていることはありますか。
最初は科学と縁のありそうな場所を主な会場にしていたのですが、それだけでは科学に興味のある子しか集まらなかったんです。これでは「かつての自分」に届かないと思って、開催場所をさらに多様にしてみることにしました。お祭りで射的をしに来た子、親子で商業施設へ買い物に来た子とかを「実験しようよ」と誘ってみるとか。でも、ただ実験をしているだけだと素通りされてしまいます。そこでダンスが役に立ちました。大音量で音楽を流して踊ってみると、「なになに」と集まって最後まで見てくれるようになりました。だから必要に迫られて躍っている部分もあるのかもしれません。
大分で地域に根差した「一村一品」サイエンスショー
―社会における科学への期待値を高めるために、どう取り組まれていますか。