若い世代で脳卒中が増加、背景には何が? 予防法と早期発見のキーワードとは
最大のリスク要因は、実は最も改善しやすいもの 「脳卒中の大半は防げます」と研究者
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)になる人が世界中で増えている。かかった後の生存期間は以前よりも長くなり、生存率も上がっている一方、患者の年齢層は若くなりつつある。 ギャラリー:脳出血の原因にも、「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 2024年10月号の医学誌「Lancet Neurology」に掲載された新たな研究によると、脳卒中後に生存している人は世界中で増えており、70歳以上の成人では発生率や有病率が増えていないどころか、むしろいくらかの減少が見られる。しかし、若い成人、特に55歳未満では脳卒中の発生率が増えているという。 「脳卒中は何歳であろうともかかる可能性があると知っておくことは重要です」と、米疾病対策センター(CDC)傘下の米国立慢性疾患予防・健康増進センターの内科医オモイエ・イモイシリ氏は言う。
脳卒中のリスクが高い人とは
世界では10人に1人が脳卒中で死亡しており、虚血性心疾患と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に次いで3番目に多い死因となっている(厚生労働省の2023年人口動態調査によれば、日本では死因の第4位)。 脳卒中を含む心血管疾患による死亡率は20世紀後半に減り続けたものの、2015年以降は横ばいになっている。全体的に見て脳卒中にかかる人の割合が最も高いのは低・中所得国だが、米国など一部の高所得国では、過去10年の間に、比較的若い成人で発生率が上昇している。 リスク要因として増えているのは、肥満率の高まりから気候変動による気温上昇までさまざまなものがあるが、中でも最大のリスク要因は高血圧であり、世界のあらゆる地域で共通している。 幸いなことに、脳卒中の全リスク要因の中で、高血圧は最も監視と改善がしやすいものの一つでもある。 「世界のどこに住んでいる人も、まず取り組むべきなのは自分の血圧の測定です」と、米バンダービルト大学医療センターの神経科医マシュー・シュラグ氏は言う。健康的な血圧は120/80mmHg未満であり、これは生活習慣の改善や投薬によって達成が可能だ。 「非常に効果的で安価な薬がたくさんありますし、手頃な値段の血圧計を使って自宅で測ることもできます」とシュラグ氏は言う。「高血圧の改善は、脳卒中だけでなく、心臓発作をはじめとする数多くの病気の予防につながります」 脳卒中のリスクにさらされているのは、血圧が極端に高い人だけではない。今回の論文を主導した、ニュージーランド、オークランド大学で脳卒中を研究するバレリー・フェイギン氏によると、大半の脳卒中と心臓病は、血圧がやや高い程度の人に起こっているという。 米国の研究では、「上の血圧」(収縮期血圧)が1mmHg下がるのは、脳卒中の発生率が約10%下がることと関連している。