大阪市で実験中の「オンデマンドバス」赤バスの二の舞避けられるか
「赤バス」の二の舞を心配する声も
大阪市や大阪メトログループがオンデマンドバスに期待する一方、大阪市民からは、かつて市内を走っていたコミュニティバス「赤バス」の二の舞を心配する声も聞かれます。 車両の赤い塗装がその名の由来となった赤バスは2002年1月、高齢者など交通弱者の移動支援などを目的に、同グループの前身である大阪市交通局が本格運行を開始しました。しかし、利用が低迷して採算性の確保が困難であるとして、2013年3月末に廃止されてしまいました。 大阪メトロの広報担当者は「今回はあくまでも実験なので採算は考えていませんが、今後オンデマンドバスを拡げていく上では当然採算性を考える必要があると思います」としています。
運賃210円は安すぎる?
今回の社会実験について、近畿大学経営学部の高橋愛典(よしのり)教授(地域交通論)は「運賃210円というのは採算を考えると安すぎます。地方のオンデマンドバスでは、距離にもよりますが大体300円から500円ほどの運賃設定が一般的です。社会実験ということで採算を取るつもりがないのかもしれませんが、本格運行に移行する際に、採算性を上げるために実験の時よりも運賃を値上げするようなことがあれば、市民が落胆して需要が伸び悩む可能性もあるのではないか」と指摘します。 自治体がバス事業者などに運行を委託するコミュニティバスでは、運賃収入が運行経費を下回った分の差額は自治体が補填するのが常です。大阪市のオンデマンドバスも、本格運行で赤字が出た場合はどうするのでしょうか。運賃値上げか、同グループが赤字を許容するのか、それとも市が補填するのか。筆者は、赤字が発生した時の対応策が本格運行に向けた論点の1つになると予想しています。
専門家「オンデマンドバスの運行で一番大きな影響を受けるのはタクシー事業者」
また、高橋教授は「オンデマンドバスの運行で一番大きな影響を受けるのはタクシー事業者です。タクシーの需要をもろに奪ってしまいかねません」とも。実験は始まったばかりであり、実際に影響が現れているのかどうかは定かではありませんが、3月30日に平野区内で客待ちをしていたタクシー乗務員は「オンデマンドバスがこの先定着するのかどうかまだわからへんけど、われわれとしたら不満。運賃安いし、タクシーが使われなくなるんじゃないの?」と口を尖らせていました。 「地方では、タクシー事業者がオンデマンド交通の運行を担うケースもあります」と、高橋教授はタクシー事業者との連携も選択肢の1つとして検討の余地があると見ています。 (取材・文:具志堅浩二)