大阪市で実験中の「オンデマンドバス」赤バスの二の舞避けられるか
地下鉄やバス事業を展開する大阪メトログループは3月30日から、利用者が予約した日時や乗降場所に合わせて運行する「オンデマンドバス」の社会実験を大阪市内の一部で始めています。高齢者などの交通弱者にとってより移動しやすい社会の実現を目指すための取り組みですが、公共交通にくわしい学者は、路線バスと同程度の運賃設定では採算が合わない可能性もあると懸念しています。 【拡大写真】新しく取り付けられた「Osaka Metro」の看板
スマホと電話の両方で予約可能
オンデマンド交通は、運行する時間とルートが決められている路線バスとは違って、利用者が希望する乗車日時や出発地、目的地に応じて柔軟に運行する交通機関のことです。バスを使えばオンデマンドバス、タクシーを使えばオンデマンドタクシーと呼ばれます。現在、福岡県福岡市や大阪市河内長野市など各地で導入されています。 今回の社会実験は、大阪市が募集した「AIオンデマンド交通の社会実験に関する民間事業提案」に基づくものです。市では、自宅から最寄りのバス停までの移動が困難な高齢者が増え、買い物や通院が思うようにできない「ラストワンマイル問題」の解決策として、自宅近くまで配車できるオンデマンド交通の導入を検討しています。 その際には、配車などへのAIの活用によって交通事業者の人手不足の改善や運行の効率化も図りたい考えです。選考の結果、4件の提案の中から大阪メトログループが出した2件が選ばれました。2件のうち、1件は生野区、もう1件は平野区での案です。その後、学識経験者や交通事業者、住民らによる地域公共交通会議での協議を経て、実施が決まりました。
複数乗車の場合はAIによって最適なルートを割り出し運行
社会実験が行われるのは、大阪市のうち、生野区西部、平野区加美周辺、平野区長吉東部周辺の3エリアです。同グループの広報担当者によると、これら3エリアは高齢化率が高い上に、人流データの解析結果から目的地に行く際に交通機関の乗り継ぎが必要になるケースが比較的多く、移動しにくい地域であると見込まれたため選ばれました。 利用者は、スマホのアプリや電話を使って配車予約する時に、乗車したい時間やバス停、目的地のバス停などを指定します。運行時間は、午前6時から午後11時までの間。バス停は、各エリア内におおむね300メートル間隔で設置されており、生野区西部に73か所、平野区加美に66か所、平野区長吉東部に51か所あります。複数の利用者が乗車する際は、AIによって最適なルートを割り出して運行します。 運賃は大人210円、小児110円。市内を走る路線バスと同じ金額です。アプリで予約する場合は、クレジットカードによるオンライン決済か現金支払いのいずれかを選べます。電話の場合は現金のみです。 使用する車両は、最大で8人の乗客が乗れるワンボックス車。生野区西部の運行に3台、平野区加美に4台、平野区長吉東部に3台が割り当てられています。 社会実験は9月末までの予定ですが、大阪メトロの広報担当者は「市には1年間行うということで提案していますので、できれば1年間続けたいと考えています」としています。 社会実験を通じて、乗降場所の交通量、利用者の反応を含む各種データをつかみ、運行する際の課題などを検討した上で本格運行を目指します。