今日W杯予選。なぜ久保建英はビジャレアル移籍を「失敗だった」と語ったのか
スペインに挑んだ2シーズン目は、ビジャレアルを含めて31試合に出場。そのうち先発は「10」に、ゴールも「1」にとどまった。そのビジャレアルは日本時間27日未明に行われたヨーロッパリーグ決勝で、PK戦の末にマンチェスター・ユナイテッドを撃破。クラブ史上初のビッグタイトルを、人口わずか5万人の町にもたらした。 歓喜に沸くビジャレアルへの挑戦を力不足ゆえの失敗と受け止め、自らに足りない要素を求めてヘタフェに移ったシーズンを、久保は「去年と比べて余裕を持ってプレーできるようになった」と、悔しさを糧に右肩上がりに転じさせて終えたと力を込めた。 「余裕というか、上のレベルに行くほど慣れるまでに時間がかかるし、そもそも自分にそのレベルに適応する器がなければおしまいだと思うので。現時点では自分のなかでの勝手な自分の価値観であり、周りがどう評価しているのかはわからないけど、いまのところ(余裕が)ついて来ている、という感覚が自分のなかにあります」 2018シーズン夏にも出場機会を求めて、久保はFC東京から横浜F・マリノスへ期限付き移籍した。しかし、新天地でも不完全燃焼に終わった日々で自らを客観視し、チーム戦術を実践してこそ初めて個の力を発揮できる、という思いとともにFC東京へ復帰。2019シーズン前半の大ブレークと、レアル・マドリード移籍を手繰り寄せた。 久保の内面に脈打つ特異な能力が、2年前の図式の再現を期待させる。ボルダラス監督が退任したヘタフェに続いて、レアル・マドリードもジネディーヌ・ジダン監督が退任したなかで来シーズンの去就は現時点で不透明だが、好感触とともに終えたシーズンの間髪入れぬ続編を、招集されているフル代表およびU-24代表ですぐに見られる。 「自分は追う立場なので、試合を観察しながら『自分ならこうする』とイメージを膨らませて。ただ膨らませるだけなら誰でもできるので、それを試合で出していきたい」 ミャンマー代表と対峙する28日のカタールワールドカップ・アジア2次予選(フクダ電子アリーナ)では、右サイドで伊東純也(ヘンク)の、トップ下では鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)の後塵を拝する。ただ、もちろん現状の序列のまま甘んじているつもりはない。自分だけが持つ武器を、久保はこんな言葉に凝縮させた。 「いままで頑張ってきたことの対価ではないですけど、自分はボール扱いに長けていると思いますし、自分でも自信があります。ボールを持ったときに違いを出したいといつも言ってきたので、そういったものを少しでも見せていければ」 勝てば最終予選進出が決まる一戦へ。たとえ先発でなくても、新型コロナウイルス禍で従来の「3」から「5」に増えた交代枠で、森保一監督から出番を告げられる瞬間が訪れると信じて、来月4日に誕生日を迎える久保は十代で迎える最後の戦いに臨む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)