今日W杯予選。なぜ久保建英はビジャレアル移籍を「失敗だった」と語ったのか
左サイドでもモイ・ゴメスらが重用される状況を打ち破るには、その時点ではまだ実力が足りないと久保は判断。自らと向き合った末に導いた結論を「失敗」と位置づけ、捲土重来の思いを込めて、ヘタフェ加入時にはこんな言葉を残している。 「僕はまだ若いので、出場時間が自分がサッカー選手だと感じられる瞬間が必要でした」 加入直後こそ先発を続けたヘタフェでも、2月に入ると途中出場が続いた。リザーブのままの試合も少なくなかった状況は、しかし、久保のなかで織り込み済みだった。 「ヘタフェのサッカーがわかっていて、その上で残りの半年間は行こうと決めたので何の後悔もありません。もともと守備が苦手だと言われがちだったというか、守備に目を向けられがちな選手だったので、守備を人一倍やらないと認めてもらえないという思いがありました。その意味ではいいチームに入ったと思っています」 フィジカル能力の高さに恵まれた大柄な選手たちが、攻守両面でインテンシティーの高いプレーを前面に押し出す“武闘派集団”としてラ・リーガ1部で異彩を放ってきたヘタフェは、久保が加入した時点で16位に低迷していた。 ホセ・ボルダラス監督は久保と、ほぼ同時期にバルセロナから期限付き移籍で加入したMFカルレス・アレニャの創造性をチームに注入。2人が触媒となって起こる化学反応に巻き返しへの期待をかけた。しかし、久保の加入直後こそ連勝したものの、その後に6試合連続で白星から遠ざかった苦境で原点への回帰を余儀なくされた。 それでも、ビジャレアルで出場機会をつかめなかった要因のひとつに、守備力があったと理解していた久保は腐らずに自己研鑽を続けた。さらに「シュートもかなり練習して、けっこう自信もついてきたという感覚が自分のなかにあった」と振り返る、ヘタフェでの約半年間の日々がシーズンの土壇場になって結実した。 ホームにレバンテを迎えた16日の第37節。1-1で迎えた後半40分に劇的な決勝ゴールを叩き込み、ヘタフェを1部残留に導いたヒーローになったのは、10分前に投入されていた久保だった。相手のパスを敵陣でカットし、そのまま左サイドをドリブルで駆け上がり、ミドルレンジから決めた今シーズン初ゴールを久保は冷静に振り返る。 「試合前に『一発逆転のチャンスがあるとしたら今日だぞ』と自分へ言い聞かせて、しっかりと準備をしていました。結局、リーグ戦では波に乗らないと終わりというか、どんどん取り残されていくだけなので。その意味ではゼロのまま終わるのと、1点を取って終わるのとでは全然違ったので、ひとつ決まったのはよかったと思っています」