教師から性暴力、34年後の勝訴 「重い扉」開けた男性の願い
中学時代に男性教師から性暴力を受けていた男性が、30年以上たった今年、加害教師を相手取って一人で裁判を起こした。刑事事件としては時効を迎え、民事裁判も損害賠償請求権が消滅しているとして弁護士から断られたが、それでも自力で提訴したのは、被害の事実を公に認定してもらうため。その闘いを通して、彼は性暴力によって「破壊」された人生の「一番重い扉」を開けた。(文・写真/ジャーナリスト・秋山千佳/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
中学時代、放課後に一人残されて性被害
【本件は、スクールセクハラ被害を受けたと主張する原告が、セクハラの過程で奪われた下着の返還を求める事案である】(※以下、【】は判決文より引用。一部固有名詞を伏せる) 原告の名は、栗栖英俊さん(46)。 「私の人生はめちゃくちゃで、高校も大学も一度中退していますし、アルバイトをしても1年続くかどうかの繰り返しでした。それは中学時代の性暴力が原因でしたが、それを説明するための証拠がずっとありませんでした」
千葉県松戸市の一室で、栗栖さんは静かに語る。 1988(昭和63)年、松戸市の市立中学校に入学。1年生の1学期の通知表では「積極的」な性格だと評されている。 しかし2学期に入ると、栗栖さんは通知表を書いた担任で、男子バレーボール部の顧問でもあった男性教師Aに月2回ほど放課後に残されるようになった。校内の会議室など人目のない場所が選ばれ、勉強や生活指導は一切ない。その代わり、Aは「お前には問題がある」と言い、栗栖さんを精神的に追い込んでいった。そして、その年の10月ごろには栗栖さんの股間を触るようになったという。 「嫌がると、『お前はわがままだ、クラスから出ていけ』とか『おれがいないと、お前は何もできないし、いじめられる』と夜10時ごろまでなじられました。精神的に衰弱させて抵抗できないように仕向けていたのでしょう。当時、周囲の大人に相談しましたが、両親は親しみを込めて触っているのだと思ったようで『熱心な先生だし、へたに揉めると内申点に響くよ』と。学年主任も『あの先生がそんなことをするわけがない』と取り合ってくれず、誰も助けてくれませんでした」