声優・金田朋子。流産を乗り越えて、44歳で長女を出産。私の武器はただ一つ。「できるママ」をあきらめても唯一娘に誇れるもの
妊婦健診から突然の入院、出産。これも必然だったんだと思えた
――無事に妊娠時期を乗り越えられて、出産はどうでしたか? 金田 自然分娩の予定でしたが、結果的には帝王切開での出産となりました。なかなか赤ちゃんが下りてきてくれなかったのと、私の体が小柄だということで、先生の判断で急きょ決まったんです。出産直前の健診で、今日このまま入院して明日出産しましょうということになって…。 私、帝王切開にはとても怖いイメージを持っていて、心の準備もできていないまま入院することになってしまって、ひと晩中泣いたのを覚えています。 渉くんも一緒に病室に泊まることができたので、一緒にいろいろな話をして「これで、いよいよ赤ちゃんに会えるんだ!」「もう腹をくくるしかない」と思って、ひと晩で気持ちの整理をしました。そうして無事出産を終えたのですが、娘のほうも、まだ出てくる準備ができていなかったのか、あわててしまったのか産声を上げるのが早すぎたとかで、生まれるときに少し羊水を飲んでしまったようでした。大丈夫かなと心配しましたが、結果的に問題はなく、そんな娘の様子もすべてがかわいかったです。 出産した次の日も、すぐにトイレに行ったりと、体は普通に動かせましたね。ただ、尋常じゃないほど足が浮腫んで、「これ、ちゃんと戻るのかな?」と心配になりましたけど、ちゃんと戻りました(笑) 私、思ったとおりにいかなかったり、「うそでしょ?」ってことがあっても、「これでよかったんだな、きっと必然だったんだな」とあとで必ず思うんですよね。だから、急に帝王切開になってしまったことも、これがきっと正解だったんだなと思っています。
“できるママ”をあきらめたら、子育てが少しだけラクになった
――子育てをするのに、年齢的な不安はありましたか? 金田 私の場合は年齢的なものよりも、自分の不器用さに対する不安が大きかったです。私は一度に2つのことができなくて、一つ一つのことを集中してやるタイプなので、どちらかというと子育てには向いていないと思うんですよね。だから、初体験の子育てはめちゃくちゃ悪戦苦闘しました。 うちは、パパがすごく器用な人で、育児のこともすごく勉強していたので、いつも助けられていましたね。それで、私は「できるママ」をあきらめたんです。 じゃあ、私は何ができるかなと考えたときに、唯一娘に誇れるのが「いつも笑顔でいる」ことでした。娘に、「ママの好きなところ3つ教えて」と聞くと、「3つとも全部、笑っているところ!」と答えてくれるぐらいなんです(笑) ――いつも笑顔で元気な印象の金田さんですが、子育てをしていて、気持ちが沈むことはありますか? 金田 子育ては、真剣になればなるほど大変なことだらけです。必ず壁にぶち当たるので、ずっと笑顔でいるのは難しいですよ。でも、悪戦苦闘して、自分の中で葛藤を乗り越えたからこそ、子どもが巣立ったときの感動があるんじゃないかなと思っています。 私は、何をするにもとにかく全力でやってしまうところがあって。次に生まれ変わるなら、器用な人に生まれたい!(笑)。ただ、私の全力さを娘は理解してくれていて、それがいいと言ってくれるのはうれしいですね。「器用じゃなくてごめんね」と娘に伝えると、「いいんだよ、それがママちゃんのいいところなんだから」と言ってくれるんですよ。 だから私も、できるフリはしないようにしています。最近では娘も成長して助けてくれるようになってきて、私が何かであたふたしていると、「ママ、大丈夫だよ。落ち着いて」と言ってくれます。本当に頼もしいですよ。 ――気分転換には何をしていますか? 金田 やっぱり走ることですかね。もともと体を動かすことは好きだったし、仕事だからというのもあって走っていたんですが、それが今ではなくてはならないものに。ジョギングしていると、気持ちをリセットできるんですよね。最近は、頭がゴチャゴチャしてしまうと、走るようにしています。