なぜ川崎Fは記録尽くしの独走Vを果たせたのか?
「当然ながら、選手たちのコンディションも頭に入れながら選んでいます。あとは自分たちのストロングポイントを出すのに、どの選手同士を組み合わせたら一番いいのか、というところですね。時間帯で言えばスタートからガンガンいける選手たちなのか、もくしは後半のところでパワーを使うのか」 中盤の組み合わせだけで13通りを数えた変幻自在ぶりを、選手たちのコンディションや対戦相手との兼ね合い、ゲームプランに応じて決めていると明かした指揮官はさらに言葉を紡いだ。 「パワーの出し方にもいろいろある。前への推進力なのか、ボールを握るのか、あるいはパワープレーのようなところも含めて、毎日選手たちを見ている自信というか、自分を信じながら決めています」 ガンバ戦では3トップを右から家長昭博、レアンドロ・ダミアン、ブレーク中のルーキー三笘薫(筑波大学卒)で組んだ。これは2月の開幕戦から中断をへて6試合続けて先発させた家長、ダミアン、長谷川竜也と並ぶ多さだ。 インサイドハーフを前への推進力に長けた田中と、テクニックあふれる大島で組ませた点を踏まえれば、ガンバ戦のプランが伝わってくる。キックオフから相手を押し込み続け、今シーズンを象徴するサッカーで優勝を勝ち取る。果たして、ピッチの上ではプランが鮮やかに具現化された。 前半22分にダミアンの豪快なボレーで先制すれば、45分、後半4分、28分には家長がプロ17年目で初体験となるハットトリックを達成。相手ボールになった直後に集団で取り囲み、敵陣でボールを奪い取る、激しく組織的な守備の前にガンバは後半26分までシュートを放てず、最後はそろって途中投入されていた3トップの小林、旗手、齋藤のコンビネーションで5点目をもぎ取った。 鬼木監督は同時に今シーズン限りでの現役引退を表明しているMF中村憲剛を後半41分から、MF脇坂泰斗を終了間際にピッチへ送り出している。新型コロナウイルス禍の特例で交代枠が「5」に増えた7月4日の再開後で、2試合を除いた27試合で指揮官は交代枠をフル活用してきた。 しかも、ベンチへ下がる5人のほぼ全員が、ガンバ戦と同じくインサイドハーフと3トップが占めている。最終ラインの選手たちの出場時間が2000分を大きく超えているのに対して、攻撃的な選手は家長の1835分が最長で、半分の1350分を超えているのもダミアン、大島、脇坂しかいない。 「オニさん(鬼木監督)が上手く選手たちを代えながら、コントロールしてくれている。主力を固定して戦うチームが多いなかで、ウチの前線の選手たちは90分間出る選手がほとんどいない。なので、次の試合に疲れを残すことなく、しっかりと回復して臨めている」