川崎Fが史上最速&2つの最多記録Vに王手…21日の大分戦勝利で結実
まるでドラマを見ているような光景だった。横浜F・マリノスのDF高野遼が左サイドから送ったクロスを、川崎フロンターレのDF登里享平がペナルティーエリア内でかろうじてクリアしたとき、時計の針は表示されていた5分のアディショナルタイム終了まで30秒を切っていた。 アディショナルタイムに突入する直前の後半45分にDFジェジエウが泥臭く押し込んだゴールで、フロンターレが2-1でマリノスをリードしていた。セオリー通りならば勝利を手にするために、セーフティーなプレーを選択する場面。しかし、ペナルティーアーク付近で登里のクリアを胸でトラップしたフロンターレのルーキー三笘薫(筑波大卒)の脳裏には閃くものがあった。 「クリアすることもできたけど、上手くトラップできて前にスペースもあった。前まで(ボールを)運ぶことができれば、よりリスクも抑えられると思ったので」 ホームの等々力陸上競技場に昨シーズンの王者を迎えた、18日の明治安田生命J1リーグ第30節。平日のナイトゲームにもかかわらず、今シーズンで3番目に多い1万1099人が駆けつけた「神奈川ダービー」は三笘が自陣のゴール前から仕掛けた、実に70メートルを超えるドリブル突破から3点目が生まれた直後にタイムアップ。2シーズンぶり3度目のJ1制覇へ、ついに王手をかけた。 トラップした直後に、三笘はまずは左タッチライン際へ向けてボールを運んだ。リスクを冒さずに、その上で追走してくるMF渡辺皓太とのスピード差をチェック。ボールをもつ自分の方が渡辺を上回っていると判断するや、可能な限りライン際を駆け上がっていく青写真を描いた。 果たしてハーフウェイラインを超えて敵陣へ突入しても、2人の差は縮まるどころかどんどん広がっていく。マリノスのセンターバック、チアゴ・マルチンスが阻止しようと迫ってきた次の瞬間だった。わずかに開いたマルチンスの股の間へボールを通した三笘は、相手ゴール前へと旋回していく。