岸田内閣は長期政権になれるか? 第一関門は突破、参院選乗り越えるカギは
昨年秋に誕生した岸田文雄内閣。今夏に2022年の大きな山場となる参院選に臨みます。岸田内閣は参院選を乗り切って長期政権になり得るのか。政治学者で東京大学大学院教授の内山融氏に展望してもらいました。 【図解】平成時代の歴代首相の一覧
上昇傾向の内閣支持率
昨年は、10月に岸田内閣が発足し、10月末に衆院選が行われた。今年の日本政治はどのような動きになるだろうか。 まず注目されるのは、岸田内閣が安定政権となるかである。今のところ、内閣支持率は安定的な数字を維持している。朝日新聞世論調査による内閣支持率を見ると、10月第1回の調査で45%、同月第2回で41%、11月には45%、12月には49%と、年末にかけて上昇傾向になっている。 一方、菅義偉内閣の支持率は、発足した2020年9月には65%だったものの、翌月に53%、2か月後に56%、3か月後には39%、4か月後に33%と、発足後に短期間で支持率が落ちていった。 21世紀に入ってからの諸内閣を見ると、小泉政権や第2次安倍政権など、発足後も一定の支持率をキープできた場合は長期政権になることが多い。一方、小泉政権に続いた自民党各政権(第1次安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)や民主党政権(鳩山内閣、菅内閣、野田内閣)は発足後数か月で支持率が急落している。これらはすべて短命政権であった。 1月の支持率がどうなるかにもよるが、これまでの支持率の推移から見る限り、岸田内閣は長期政権になる素質を有していると思われる。今年7月に予定されている参院選に勝利すれば、長期政権の可能性は大きく開けるだろう。
岸田カラー打ち出せるか?
そこで重要となるのは、岸田内閣がどれだけ政権のカラーを打ち出せるかである。 経済政策として岸田首相は「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」を打ち出している。これまでのところ、子育て世帯への10万円給付や、看護・介護・保育などの賃金引き上げといった施策が進められている。 そうした施策を裏打ちするのが予算であるが、昨年末に閣議決定された2022年度当初予算案は107兆円を超え、過去最大となった。社会保障費(36兆円強)や防衛費(5兆円強)の増大に加え、新型コロナ対応の予備費5兆円が積み上げられるなどしたためである。 一方で、予算案を策定する際の明確な方針は見えにくかったように思われる。例えば、社会保障費の重要項目である診療報酬の改定の際には、引き上げを要望する日本医師会などと抑制を目指す財務省サイドとの板挟みになり、結局、人件費などの本体部分は0.43%引き上げられることとなった(薬価部分は引き下げのため、全体では0.94%のマイナス)。このように、来年度予算は、一貫した方針に基づくというよりも、各方面からの要望を受け入れて調整する形で策定されたように見える。 しかし、少子高齢社会が本格化する中で社会保障制度を持続可能なものとするためには、単なる受身の調整にとどまらない抜本的な議論が求められる。国債発行残高も22年度末には約1027兆円となる見込みである。日本のGDP(国内総生産)の1.8倍超という巨額の赤字を日本財政は抱え込むことになる。 したがって、岸田政権には、「バラマキ」にとどまらない新しいビジョンと施策を主体的に打ち出していくことが求められる。特に「成長と分配の好循環」実現のために、分配の財源を生み出すための成長を強力に後押しすることが必要である。例えば脱炭素、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などのさまざまな課題を好機として、成長の起爆剤とすることが有望であろう。