岸田内閣は長期政権になれるか? 第一関門は突破、参院選乗り越えるカギは
注目される政治日程は?
その他に本年の政治日程として注目すべきものを挙げておこう。 1月17日には通常国会が召集される見込みである。まずは来年度予算案を通過させることが最大の課題である。半導体などの供給網強化や基幹インフラの信頼性確保を目的とする経済安全保障推進法案も提出される見込みである。昨年の臨時国会で積み残しとなった文書通信交通滞在費(文通費)の法改正も議論となろう。 1月23日には沖縄県名護市長選の投開票がある。名護市は米軍普天間飛行場の移設予定地である辺野古を抱えているため、同市長選の帰趨は国政にも大きな影響があり得る。自民・公明が推薦する現職と、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」が推す新人候補の一騎打ちとなる見込みであるが、新人候補側が移設反対を明言しているのに対し、現職側は移設への態度を明らかにしていない。もし現職が敗れれば岸田政権に痛手となるだろうし、逆に新人候補側が敗れれば、9月に任期が満了する玉城知事の再選に影響が出てくる可能性がある。 外交関係の日程について見ると、岸田首相は年明け通常国会前の訪米を探っているとされる。日本の首相は政権発足後早期に訪米して米大統領と会談するのが常であるが、岸田首相はまだである。東アジア情勢が緊張を高める中、日米関係強化のために早期の会談実現が望ましいものの、米バイデン政権が内政で苦戦していることもあり、年明けすぐの会談実現には不透明さが残る。 6月にはドイツでG7サミットが行われる。岸田首相は安倍政権の外相として外交経験は豊富であるが、各国首脳を相手にどのような活躍を見せられるかは、参院選でも問われることになろう。 中国との関係も難題である。2月には北京冬季五輪が開催されるが、ウイグルでの人権侵害などへ抗議するため、米国や英国などは政府当局者を派遣しない「外交ボイコット」を行うこととした。日本政府も「外交ボイコット」の表現は避けているものの米英の方針に同調している。東シナ海での軍事活動、台湾情勢などの懸念も多い。とはいえ、対決姿勢一辺倒では適当でない。中国との経済関係を切り離すことはまず不可能であるし、9月には日中国交正常化50周年を迎える。中国に人権改善を促しつつ緊張緩和のための対話の努力を行うことが必要であろう。岸田外交の手腕が問われるところである。
----------------------------------- ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など