岸田内閣は長期政権になれるか? 第一関門は突破、参院選乗り越えるカギは
どれだけ一貫性を保てるか?
この点で少々気になるのは、岸田首相がどれだけ一貫性を保てるかということである。岸田首相がアピールする「聞く力」は、ややもすると一貫性を欠いたり、利害関係者の要望を受け入れたりするだけになりかねない。実際、岸田首相が総裁選のときに主張していた金融所得課税の強化は、党内の議論を経て当面見送りとなった。子育て世帯への10万円給付では、現金かクーポンか支給方法について方針が揺らいだ。 安倍政権や菅政権では首相官邸主導が行き過ぎ、熟議が軽視された懸念があったため、岸田首相の「聞く力」が貴重な資質であるのは疑いない。とはいえ「聞く」だけで終わってはならない。一貫性を保てずブレが目立つようだと、国民の支持を失うことにもなりかねない。重要なのは、「聞く力」に基づいて熟議を行った上で、いったん決定したら強力に実行することである。岸田首相には、熟議と実行力の両者を兼ね備えたリーダーシップを期待したい。
政権を安定させてリーダーシップを発揮するためには、自党内の安定も重要である。その点で不安要素となりうるのは、安倍晋三元首相との関係である。かつて安倍氏は首相在任中に岸田氏を意中の後継候補と考えていたとされているものの、一昨年、昨年の総裁選とも結局は別の候補を推すこととなった。そのようなことから岸田首相と安倍元首相の間には確執があると見られている。実際、岸田首相は組閣時に官房長官人事などで安倍の意に沿う人事を行わなかった。安倍元首相はいまや党内最大派閥である清和会の領袖であることから、安倍氏との確執は岸田政権の党内ガバナンスを揺るがしかねない。 一方で、岸田首相が党内で頼りにしているのは、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長だとみられている。茂木氏は昨年11月に故竹下亘元総務会長から派閥を引き継ぎ、領袖となった。茂木派すなわち平成研究会は、田中派・竹下派の系譜に連なる派閥であり、かつては岸田首相の出身派閥である宏池会と盟友関係にあった。麻生派も元は宏池会を源流としている。 20年ほど前から自民党では清和会が大きな存在感を示してきたが、現在、麻生派、茂木派とも党内第2派閥となっている。今後、麻生派も含めた「大宏池会」と平成研との盟友関係が復活し、清和会に対峙する構図となるかもしれない。以前と比べて現在は派閥の団結力が低下してきているため、昭和の頃のような激しい派閥抗争にはならないだろうが、党内の派閥力学に変化が生ずる可能性がありそうだ。