「成長と分配の好循環」掲げる岸田首相 野党や従来政権との違いは?
岸田文雄首相は14日、衆議院解散後に官邸で記者会見し、19日に公示される衆議院選を見据えて「岸田政権は成長も分配も実現を目指す。野党の言うように分配を言うだけでは成長ができなくなり、分配するパイもなくなる。この誤りを二度と繰り返してはいけない」と述べ、同様に「分配なくして成長なし」と分配強化を掲げる立憲民主党など野党との違いを強調した。 【動画】岸田首相が会見 衆院解散、4年ぶり衆院選へ
給与引き上げた企業を税制で支援
まず成長について「民間の活力を最大限引き出し、国際競争に打ち勝つ産業や企業を生み出すことで、力強い成長を実現する」と説明。 分配については「単に市場や競争に任せるだけでは、成長の果実は一部の国民にしか届かない」「分配を市場に任せるのではなく、国が丸抱えするのでもなく、民と官がそれぞれの役割を果たすことで国民を豊かにしていく」と繰り返し、「成長と分配の好循環を実現していく」と訴えた。 「雇用を増やすことに加え、国民お一人お一人の給与を増やす」とし、賃上げ促進税制を強化するよう政府与党に指示したと述べた。具体的には、従業員の給料を引き上げた企業を税制で支援し、控除額の上限も大胆に引き上げる。 また自身が議長を務め、 山際大志郎経済再生担当相を副議長とする「新しい資本主義実現会議」を創設するとし、新しい資本主義のグランドデザインを描くと表明した。
「分配」は立憲民主党や従来政権も掲げる
分配の強化は、立憲民主党などの野党も公約に掲げている。記者との質疑の中では、岸田首相も「野党と一緒ではないかという指摘がある」と触れながら、「成長を考えなければ分配する成長の果実がないわけなので、行き詰まってしまう」と主張した。 「成長と分配の好循環」は安倍政権のアベノミクスでも打ち出してきたが、「従来の成長と分配は、成長も市場原理や競争や優勝劣敗、こういったものを中心に考えてきたところがある」と指摘。「世界の趨勢を見た場合、単に市場や競争に任せるだけではなく、政府が役割を担って、官と民が協力して成長を考えていく。これが時代の趨勢」「分配も自然に任せる、トリクルダウンが起こるんだと言ってきたが、なかなか結果にたどり着かなかった」との認識を示した。 その上で、産業界への賃金引き上げの働きかけだけではなく、看護師や介護士、保育士らの賃金引き上げに向けて、政府が主導して決められる公定価格については「率先して引き上げる努力をしていかないといけない」とし、「官と民が共同する形で結果を出そうというのが従来の(政権の)経済対策とは違う」と強調した。 公定価格については「年末までに具体的な結論を出す」との方針を示したが、介護、医療、保育分野の賃金引き上げは立憲民主党などがこれまでに訴えてきた内容でもある。