岸田首相、介護や保育「恒久的に給与3%引き上げ」 株主に賃上げへの理解求める場面も
岸田文雄首相は21日夜、臨時国会閉幕を受けて官邸で記者会見し、政権として掲げる「新しい資本主義」の実現に向けた政策や考え方を示した。肝となる賃上げを企業が行いやすい環境をつくるため、公的価格の具体的な引き上げ幅やスケジュールのほか、企業が賃上げ分を価格転嫁できるよう働きかける方針を明らかにした。こうした人への投資に対して株主に理解を求める場面もあった。 【動画】岸田首相が会見 臨時国会が閉幕
賃上げ分の価格転嫁しやすい環境整備にも言及
新しい資本主義をめぐり、まず「人への投資の強化」を打ち出した。「デジタルやカーボンニュートラルをキーワードとして大きく変化する経済社会において新たな価値を生み出すための鍵である」と位置づけ、約100万人の能力開発や再就職・転職支援においては従業員や企業経営者ら民間の発想を取り入れて制度設計を行うとした。 「分配を行うことで成長を支える新たな需要を創出し、次の成長につなげる」とあらためて強調し、企業が賃上げしようと思える雰囲気を醸成していくと訴えた。具体的には「国が率先して公的価格の引き上げを行う」とし、介護や保育・幼児教育などの従事者の給与を来年2月から恒久的に3%引き上げるとともに、看護の従事者に関しては、来年2月から1%、10月から恒久的に3%引き上げる方針を明らかにした。 中小企業が賃上げした際、その分を「適切に価格転嫁できるよう」産業界に働きかけるとも言及し、政策パッケージを27日までにまとめる。公正取引委員会と中小企業庁などが問題となる事例を把握するための仕組みづくりにも乗り出し、「問題が多い業界に対しては立ち入り調査や要請を行い、価格転嫁を行いやすくする」と語った。 賃上げを通じた分配は「コストではなく未来への投資」だと述べ、それが企業の持続的な価値創造の基盤になることを「株主にも理解してもらうことが必要」と指摘。来年度に非財務情報の見える化のルールを策定するとした。 デジタル技術の活用で地方活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」については、デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)での議論が進んでいるとし、行政が遵守すべきデジタル原則の策定と、それに合うように4万件の法律・政省令・通知などの一括見直しを行うとした。 第5世代(5G)移動通信システムの人口カバー率を2023年度に9割まで引き上げ、光ファイバーは2030年までに99.9%の世帯をカバーできるように整備を進めるとし、「すべての人がデジタル化のメリットを教授できる社会の実現を目指す」と語った。 気候変動問題については、2030年度に温室効果ガスを2013年度より46%削減する政府目標と、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」宣言を「堅持する」と明言。「新しい資本主義の中心に位置する問題だ」とし、気候変動問題とどう連携させていくかの方向性を年明けに示すとした。