「あなたという人がいないのに、時は過ぎる」安倍元首相国葬(全文)※追悼の辞のみ
細田衆院議長「その功績は誠に偉大」
司会:衆議院議長、細田博之さま。 細田:元自由民主党総裁、衆議院議員、従一位、大勲位、安倍晋三くんは、多年、憲政のために尽力し、特に院議をもってその功労を表彰され、国務大臣の任に就き、四度、内閣総理大臣の重責を担い、8年8カ月にわたり国政を統理されました。君は終始、経済の成長および行財政と教育の改革、ならびに災害からの復興に心魂を傾け、また、世界の平和と繁栄に力を致し、国民生活の充実とわが国の国際的地位の向上に貢献されました。その功績は誠に偉大であります。衆議院は君の長逝を哀悼し、謹んで弔辞をささげます。令和4年9月27日。
尾辻参院議長「謹んで哀悼の意を表す」
司会:参議院議長、尾辻秀久さま。 尾辻:参議院は、憲政史上最も長きにわたり内閣総理大臣の職責を務め、わが国、民主政治発展のため力を尽くされました衆議院議員、従一位、大勲位、安倍晋三くんの長逝に対し、謹んで哀悼の意を表し、恭しく弔辞をささげます。令和4年9月27日。
戸倉最高裁長官「わが国の繁栄のために全力を傾けられた」
司会:最高裁判所長官、戸倉三郎さま。 戸倉:本日、ここに従一位、大勲位、故安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀が執り行われるに当たり、謹んで追悼の辞を申し上げます。安倍元内閣総理大臣は、その生涯を通じ、高い指導力や先見性を持ってわが国のために献身されました。特に、わが国が変革期を迎え、内外の情勢が困難な中にあって、長きにわたり内閣総理大臣としての重責を担われ、わが国の繁栄のために全力を傾けられました。このたびの突然のご逝去は、誠に痛恨の極みであります。ここに安倍元内閣総理大臣のご冥福を心からお祈り申し上げ、追悼の辞といたします。令和4年9月27日、最高裁判所長官、戸倉三郎。
菅前首相「悲しみと怒りを交互に感じながら、この日を迎えた」
司会:友人代表、菅義偉さま。 菅:7月の8日でした。信じられない一報を耳にし、とにかく一命を取り留めてほしい、あなたにお目に掛かりたい、同じ空間で同じ空気を共にしたい、その一心で現地に向かい、そして、あなたならではの温かなほほ笑み、最後の一瞬、接することができました。 あの運命の日から80日がたってしまいました。あれからも、朝は来て、日は暮れていきます。やかましかったセミはいつの間にか鳴りを潜め、高い空には秋の雲がたなびくようになりました。季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに、時は過ぎる。無情でも過ぎていくことに、私はいまだに許せないものを思います。天はなぜ、よりにもよって、このような悲劇を現実にし、命を失ってはならない人から生命を召し上げてしまったのか、悔しくてなりません。悲しみと怒りを交互に感じながら、今日のこの日を迎えました。 しかし、安倍総理とお呼びしますが、ご覧になれますか。ここ武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ち会おうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが少なくないようです。あすを担う若者たちが大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています。総理、あなたは今日よりもあすのほうが良くなる日本をつくりたい、若い人たちに希望を持たせたいという強い信念を持ち、毎日毎日、国民に語り掛けておられた。そして、日本よ、日本人よ、世界の真ん中で咲き誇れ。これがあなたの口癖でした。次の時代を担う人々が未来を明るく思い描いて、初めて経済も成長するのだと。今、あなたを惜しむ若い人たちがこんなにもたくさんいるということは、歩みを共にした者として、これ以上にうれしいことはありません。報われた思いであります。 平成12年、日本政府は北朝鮮に米を送ろうとしておりました。私は当選まだ2回の議員でしたが、草の根の国民に届くなら良いが、その保証がない限り、軍部を肥やすようなことはすべきでないと言って、自民党総務会で大反対の意見を打ちましたところ、これが新聞に載りました。すると記事を見たあなたは、会いたいと電話をかけてくれました。菅さんの言っていることは正しい。北朝鮮が拉致した日本人を取り戻すため、一緒に行動してくれればうれしいと、そういうお話でした。