なぜプロ4年目にして初達成のロッテ種市が今季パ”完封一番乗り”となったのか?
ZOZOマリンスタジアムで対戦した、前回対戦でも10三振を喫して敗れている西武の辻発彦監督は「いいピッチャーですよね」と、不得手な相手となりつつある種市をこう評した。 「コントロールがいいのでストライクが先行するだけでなく、バッティングカウントでも平気で変化球でストライクを取れる。緩急も上手く使ってきますよね」 2016年のドラフト6位で青森・八戸工業大学第一高から入団して4年目。高校時代には最速148kmをマークするも、1年目は一軍登板がなかったどころか、二軍公式戦でも1試合の登板にとどまった種市に、急成長へのターニングポイントが訪れたのは昨年1月の自主トレ期間中だった。 ロッテの先輩・石川歩の紹介を受けて、福岡ソフトバンクホークスの豪腕・千賀滉大へ志願して弟子入り。合同練習を行ったなかで投球フォームを修正したことで、千賀をして「貫通力がすごい」と言わしめるほど直球の威力がアップ。ロングリリーフ役として開幕一軍を勝ち取った。 前述したように4月から先発ローテーションに入った昨シーズンは、最終的に石川と並ぶチーム最多の8勝をマーク。目標としていた100イニングをクリアした過程で、8月4日の楽天戦では江夏豊および木田勇と並んで日本人投手で最多となる、23イニング連続奪三振をマークした。 今シーズンへ臨むにあたって、背番号が「63」から「16」へ変更された。球団からかけられる期待の大きさを物語っているが、種市自身はもちろん満足していない。昨シーズンまではフォークボールが多かったウイニングショットが、かつて千賀を驚かせた直球へとシフト。スパンジェンバーグにボール球を振らせて、完封劇を成就させたシーンはその象徴と言っていい。 「貯金が昨日でゼロになっていたと思うんですけど、何とか勝って、貯金も作れたことはよかった。僕が投げる試合ではできるだけ勝てるように、頑張りたいと思います」 負ければ借金生活に突入するピンチで、ロッテを首位ソフトバンクと1ゲーム差の4位に踏みとどまらせただけではない。新型コロナウイルス対策として異例の6連戦が続くなかで、ロッテにとっても今シーズン初となる完投勝利で、勝ちパターンの中継ぎ陣を休ませることもできた。 石川が0勝2敗とまだ白星を手にできず、楽天からFA移籍で加入した美馬学も2勝2敗と貯金を作れていない。開幕から1カ月あまりが経過した今シーズン。防御率もパ・リーグ2位の2.20へと上昇させた種市から、ロッテのエースにふさわしいオーラが漂いはじめている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)