ドローンよ、福島から飛び立て 再興拠点に集まるベンチャーの挑戦 #知り続ける
福島県の浜通り、南相馬市にドローンのベンチャー企業が集まっている。燃料電池を使ったロボデックス(横浜市)や災害対策に強いテラ・ラボ(愛知県)など。その中心には「福島ロボットテストフィールド」、通称「ロボテス」という公的な実験施設がある。ここでは広い敷地を生かした実験的な飛行が可能だ。福島再興のためにつくられたロボテスと、伸びゆくドローン企業の挑戦を取材した。(文・写真:科学ライター・荒舩良孝/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
様々な環境でドローンを試験
地面に置かれたマルチコプター型ドローンのプロペラがゆっくりと回り始めた。「ブーン」と音を立て、砂ぼこりを巻き上げながら機体が上昇していく。ドローンの向かう先には橋があり、目視では確認しにくい側面の様子を撮影する。 この橋はドローンやロボットを用いてインフラ点検の実証実験などをするためにつくられた試験用のものだ。福島ロボットテストフィールド(ロボテス)のインフラ点検・災害対応エリアに設置されている。
ロボテスは海岸まで1キロほどの場所にあり、東京ドーム10個分という広大な敷地をもつ。 試験用橋梁のほかに、ドローンを飛ばすための全長500メートルの滑走路、長さ50メートル道路幅6メートルの丸形トンネル、ビルや住宅の並ぶ市街地の交差点を再現した構造物などが設置されている。 どれもドローンやロボットの性能試験をするための実験施設だと、副所長の細田慶信さん(59)が説明する。
「ドローンには航空法などの規制があり、いきなり街中で飛ばすことはできません。そこで、様々な状況でドローンの性能を試す場として、このテストフィールドが2018年7月から段階的にオープンしてきました」 福島県の東部地域、通称「浜通り」はもともと農業だけでなく、製造業も盛んで、1998年にIHIが相馬市に航空機のジェットエンジン部品を製造する工場を開設した。その後、航空宇宙関連の事業に乗り出した会社が複数あり、2010年度は約2.2兆円の域内総生産があった。だが、2011年3月に震災と原発事故が発生し、2011年度の域内総生産は約1.7兆円にまで落ちこんだ。