「脱会には居場所が必要」「オウムの教訓生かされず」 鈴木エイト氏×江川紹子氏が語る旧統一教会問題
エイト たしかに理念法すらなく、何も法規制がなかったことで、旧統一教会は「一世代」分放置され、被害を受ける人が増えてしまったわけですよね。 江川 「カルト教育は心のワクチン」と私は言っているんですが、そういう体験をした人の話を聞いたら、自分がそういう考えの人に接したときに理解できると思うんです。 エイト カルト教育をすることで、現役信者の子への偏見もなくなる方向にもっていかないといけないですね。いま旧統一教会の二世はひどくいたたまれない感じですから、かわいそうなんです。
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──そうした信仰の人たちを排除すると、もっと悪い方向に進んでしまうのでは。社会としては、どう接するべきでしょうか。 江川 オウムのときには省庁連絡会議ができて、それに付随した研究会ができたんです。警察庁、厚生省(現厚生労働省)、法務省、それと心理関係の専門家などが参加した。その総括報告書があるのですが、その中に脱会者のケアの話は随分たくさん書かれているんです。カルト研究センター(仮称)を設けるという提言も書かれていたし、カルトの問題は宗教の問題ではなく、人権問題、犯罪問題、消費者経済問題でもあると書かれている。 エイト ちゃんとしたことが書いてあるんですね。でも、その後、その総括報告書は生かされなかった?
江川 そうなの。予防啓発活動を積極的に行うことでカルト勧誘に対する抵抗力をつけるとか、心理相談、社会復帰施設ではカウンセリングが重要だとか、情報集約のネットワークを構築するとか、すごく重要なことが書いてあるんです。でも、いまは国立公文書館に眠っている。 エイト これをたたき台にすれば、旧統一教会問題の対策にも使えますよね。そもそも国の報告書がこうした団体を「カルト」と記載していることも重要です。旧統一教会はカルトという言葉はヘイトスピーチだといま言葉狩りをしようとしているんですが、はるか前に「カルト」という言葉が国の機関で打ち出されていた。