「脱会には居場所が必要」「オウムの教訓生かされず」 鈴木エイト氏×江川紹子氏が語る旧統一教会問題
エイト そうですね。学費、生活保護はもちろん未成年の場合だと児童福祉法もありますね。それなら「二世のシェルターを新たにつくって」という話より早い。 江川 そうです。以前は18、19歳の子だと児童福祉法を離れて、しかも未成年という空白があり、行き場がない子がいた。でも、今年4月の民法改正で18歳から成人となったので、18歳になれば家を出て、生活保護や社会福祉士などにつなげることができますからね。もちろん、それをやりながら不十分なところは、新たな制度を考えていく。 エイト 子どもの声を聞き、支援をする「子どもアドボケイト(代弁者)」と呼ばれる人たちも出てきていますし、苦しむ二世がそういう支援員の働きで助けられることもあると思います。
まずは理念法から…「カルト教育は心のワクチン」
──他の宗教についてはどうでしょうか。 江川 もちろん関係します。例えば「エホバの証人」では、ムチでたたかれるなど体罰をされた事例がたくさん報告されていますが、これは現行法では児童虐待防止法が適用できるケースがある。 エイト ただ、家庭や信仰のコミュニティの中で行われているとその虐待が見えないし、子どもも声を上げられない。そういう子に気づいてあげられるようにできるかが課題です。 江川 例えば、エホバだと信仰上、七夕などの催しや運動会の騎馬戦に参加しないなどの特徴があり、先生も気づきやすい。そういう子は特に注意して、虐待がないかどうか見てほしい。家庭でのムチの体罰は、子どもが「それが当たり前」として育つので、本人もおかしいことだと気づかない場合がある。
──そうした宗教を規制するために、フランスの「反セクト法」のような法をつくったほうがいいという声もあります。同法は、身体や精神の不法侵害、無知や脆弱な状態につけ込む不法侵害(マインドコントロール)などで有罪判決を複数得ると解散となる条件が掲げられました。こうした規制についてはどうでしょうか。 エイト 私は日本版反セクト法があったほうがきっちり縛れるかなと思いますね。フランスでも一つ一つ事例を積み上げて、「この団体はこういうことをしている」と団体を縛っていった。解散までいった団体はないようですが。 江川 私は、まずは罰則を伴わない、いわば理念法から始めたらいいんじゃないかと思うんです。例えば、ヘイトスピーチ対策法も理念法で直接の罰則はない。ただ、理念法であっても法律があると、それに基づいた啓発活動、社会活動が生まれる。必要であれば、この理念に基づいて、川崎市のように自治体が条例をつくることもある。そういう啓発活動ができれば、歪んだ教えとか、問題行為につながる教えを信じてしまうような人を減らせるんじゃないかと思います。