「脱会には居場所が必要」「オウムの教訓生かされず」 鈴木エイト氏×江川紹子氏が語る旧統一教会問題
エイト 不法行為に基づく損害賠償請求は20年で消滅時効になりますね。また、もし法人を解散させても、信者として教義を信じている人は損害賠償請求をしないでしょう。そういう(マインドコントロール的な)問題も残ります。 江川 献金をどう扱うかは、憲法で保障されている財産権に関わるので難しい。たとえば法律で上限を決めたりするのは無理だし、家族の取消権も限定的になるでしょう。 エイト 献金をしている人が正常な判断ができなくなった状態なのか、それを誰がどう判断するのか……。正常な判断ができないと見て、法的に代理人を立てる成年後見制度の話もありますが、第三者が絡むのは難しいですね。 江川 だから、お金に関わる部分に限った立法を急ぐべきではないと思うんです。もっと丁寧にやらないといけない。どんな法制度をつくればいいか、(国会に)委員会をつくって、総合的な見地からじっくり議論してもらいたい。むしろ現行法でできることが複数あると思うので、それを進めてもらうほうがいいと思う。
被害者の救済へ 現行法の変更なら「いますぐできる」
国会で進む被害者救済の議論で、寄付をめぐる規制と並んで重視されているのが、信者の子(宗教二世)や配偶者の救済だ。厚生労働省は10月初旬、信仰を理由にしても児童虐待にあたる行為はあると全国の自治体に通知を出した。身体的暴力はもちろん、適切な食事を与えない、あるいは子どもの心を傷つける言動。従来こうした問題は信仰が関わる場合、児童相談所や警察で対応されないことが多かった。立法を待たずしての現行法での対応は注目を浴びた。
江川 厚労省の今回の判断は早かったし、よかった。こういう現行法を使ってできることで一定程度進めるのがいいんです。現行法でできる対策はほかにもあって、たとえば文部科学省では「高等教育の修学支援新制度」というのがある。経済的な理由、あるいは父母等による暴力等の理由で、学業を続けられないという人向けの支援。給付型の奨学金や授業料の減免などがあるんです。この「暴力等」の「等」に、宗教による虐待を入れればいい。 エイト たしか、いま知り合いの社会福祉士がその制度をうまく使って、カルトの二世の子たちを学校に行かせるようにしていたと思います。 江川 そうですね。でも、制度は十分ではなかった。従来は春か秋か、適用できる時期が決められていたからです。でも今年7月に、いつからでも使えるようになったそうです。現行法の変更で救える人たちがいるのなら、全省庁で見直してほしい。いますぐできるのですから。