老朽化で解体も……全国に存在する巨大観音像 建立の理由と管理の難しさ
昨年、淡路島にある高さ100メートルの巨大観音像の解体が大きな関心を集めた。40年前に建立され観光スポットにもなったが、その後所有者が死去し、老朽化して危険な状態が続いていたためだ。日本には巨大な観音像がいくつも存在する。どう運営されているのか、長く安全に管理していくには何が必要なのか。日本の巨大観音の実像を取材した。(ノンフィクションライター・伊田欣司/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
オーナー夫婦の死去で廃墟化
兵庫県の明石海峡大橋を車で渡り、淡路島を走ること約30分。国道28号近くで大規模な解体工事が進んでいる。高さ100メートルの「世界平和大観音像」の撤去作業だ。観音像は台風で外壁の一部が剥がれ落ちるなど、住民にとって危険な建物になっていた。 もともと観音像は、大阪で不動産業を営む男性が約35億円を投じ1982年に建てられた。当時は巨大仏像として日本一の高さを誇った。 男性は1988年に死去し、観音像を相続した妻も2006年に死去したため、20年に国の所有に変わった。21年6月から撤去工事がスタートしたが、解体費8億8000万円は国の負担だ。
「(男性は)大阪で事業に成功し、故郷に錦を飾るつもりで観音さんを建てたと聞いています。何もなかった場所が、観光バスの列ができる人気スポットになりました」 地元地区の町内会長、五条勉氏が振り返る。観音像の台座部分は地上5階、地下1階で、レストランや博物館などがある観光施設だった。1日に2000人以上が訪れる時期もあったが、賑わったのは5年ほどだという。妻の死去後は相続する者がなく、観音像は閉館された。 施設は次第に廃墟化し、無断で侵入する者も出てきた。五条氏は「解体撤去が決まったときはひと安心だった」としつつ、こう続けた。 「オープン時は大勢の観光客が訪れ、神戸や大阪から見える淡路島のシンボルでした。ちょっと寂しい気持ちはあります」
すでに撤去された長崎の観音
今回の撤去で、日本各地の巨大な観音像や仏像に注目が集まっている。これまで国内に建立された高さ40メートルを超える観音像は12体。そのうち6体は1980年代に、3体は90年代に建てられた。世界平和大観音のように、外壁が崩落するほど老朽化し、所有者がなく廃墟となった観音像はほかにない。