「統一教会という組織の全体像に少しずつ近づいている」ーージャーナリスト有田芳生の「原点」と、見えてきた「収奪の構造」
ジャーナリストで前参院議員の有田芳生は、京都の四条河原町で小柄な女性に「アンケートに協力してください」と声をかけられたことが忘れられない。「おとなしそうな彼女の姿と、当時言われていた統一教会(現在の名称は世界平和統一家庭連合)とがどうしても結びつかなかった」。有田は1980年代に旧統一教会の取材を始めたが、今も基本的な構造は変わっていないという。なぜ40年も追い続けるのか。話を聞いた。(取材・文:藤井誠二/撮影:横関一浩/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
2世の苦しみ、親の嘆き
有田芳生は今、各地を飛び回っている。取材の日も、その足で熊本へ向かうことになっていた。両親が旧統一教会の合同結婚式で結婚した、いわゆる「祝福2世」の女性に会いに行くのだという。同地で講演した際に「実は……」と声をかけられた。 「じっくり話を聞こうと思って。祝福2世と信仰2世は異なるんだけれども、いずれにしても、2世と呼ばれる子どもたちの悩みはものすごく深いんです。彼らのための仕組みをつくることがぼくの仕事かなと思っていて、地方自治体のレベルで相談窓口をつくってくれないかと各地でお願いしています」 安倍晋三元総理大臣が、母親が多額の献金をさせられて旧統一教会に恨みを募らせた男性に銃撃される事件が起きてから、メディアで発言する機会が激増した。事件の背景にある問題をジャーナリストとして発信する。 ──7月の事件から2カ月以上経ちましたが、今の状況については率直にどんな気持ちですか。 「まさかこんなことになるとは、ですね」 ──旧統一教会はまだこんなことをやっていたのか、という驚きですか? 「いや、やっていたのはわかっていた。国会議員の公設秘書、私設秘書に旧統一教会の信者が入っているというのも、ぼくは以前から週刊文春に書いていたし。だけど、自民党が自らアンケートをとって『180人が少なくともなんらかの関係がありました』と公表せざるをえない事態になるなんていうのは、思ってもみませんでした」 「1992年にも『どんな政治家とつながりがあるのかリストを出してほしい』という声はあったんです。『その人たちにはもう投票しません』という手紙がけっこうきたんですよ」