「貧乏から這い上がってきたオレにはサッカーしかなかった」ーー“ドラゴン”久保竜彦とW杯
2000年代の日本を代表するストライカーのひとり、久保竜彦(46)。破天荒な才能と評されながら、W杯本戦での出場は叶わなかった。現役時代の森保一・日本代表監督とプレーした経験もある久保は、カタールW杯、そして代表チームをどう見つめているのか。久保が暮らす港町・山口県光市室積を訪ねた。(取材・文:栗原正夫/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
港町で、塩コーヒーに目覚めた「ドラゴン」
待ち合わせ場所の港に、“ドラゴン”はジャージ姿でゆっくりとママチャリをこぎながら現れた。 現役時代に日本人離れした身体能力を武器に“ドラゴン”の愛称で知られた元サッカー日本代表FW、久保竜彦。久保は、14年の広島県リーグの廿日市FCでのプレーを最後に38歳で引退。18年から、海岸の絶景とのんびりとした空気感に一目ぼれした山口県光市室積へ移住している。現在はサッカー教室やイベント出演で地方へ出向くこともあるが、週2日は「ドラゴンカフェ」で地元名産の「牛島(うしま)の塩」で自家焙煎した‟塩コーヒー”をお客さんに振舞うなど、のどかな港町で釣りや野菜作りを楽しむ日々を過ごす。 「マルシェや都合がつくときに店で“塩コーヒー”を淹れています。元々、コーヒーは好きじゃなかったけど、こっちの塩はいいし、塩を入れて焙煎してみたら『めっちゃ、うまっ!』となって。コーヒー豆はカンボジア産で、豆を干して、選定して、焙煎して店で出すところまでぜんぶやっています」
「毎朝トンビの鳴き声で5時半には起きて海沿いを散歩すると、そこら辺に魚がいるのが見えます。アジとかイカ、ブリが釣れることもあるし、それを近所のオバちゃんに捌いてもらって食べたり。知り合いの畑を借りて野菜も作っていますが、やっぱり自分が関わったものってうまい」 最近は馴染みの大工の親方の手伝いを買って出るなど、将来は囲炉裏とか竈(かまど)がある家を自作したいとの希望も持っている。 「風呂も薪で沸かせられたら最高じゃないですか(笑)」 現役時代は豪快なプレーとは裏腹に、極端な口ベタでインタビュアー泣かせとして知られていた。だが、年を重ね、印象はだいぶ変わってきた。