「今は、スランプかもしれないですね」――戸田恵梨香ロングインタビュー
役柄そのものにのめり込まず、脚本を理解し、“作品を成立させること”に集中する。それが俳優・戸田恵梨香(34)の仕事の流儀だ。その高い演技力は、持って生まれたセンスだけでなく、ひたむきな研究心によって支えられている。作られたイメージが一人歩きすることに悩んだこともあったというが、「作品に対する愛情の方が強いので、もうあれこれ言われても気にならない」。自身をどんな性格だと捉えているのか。何を愛し、何を恐れているか。現在の輪郭を浮かび上がらせる、戸田恵梨香の言葉。(取材・文:山野井春絵/撮影:木村哲夫/Yahoo!ニュース オリジナル特集編集部)
将来、子離れできるのかなって、自分のことが心配になったりします
「じゃあ次は、何か動物と戯れている感じでお願いします」 撮影中、カメラマンがそうリクエストすると、戸田恵梨香は一瞬戸惑いながらも、わかりました、と笑顔で足下に視線を走らせた。まるで子犬と散歩をしているかのような光景。その自然な仕草に、つい見入ってしまう。 「最近は撮影されるにあたって、『今回のテーマは天使』とか『女神』とか自分で決めていて。(笑)でも、『動物と戯れている感じ』は初めてです(笑)」 実際に、ファンには愛犬家としてもよく知られている。 「もう、本当に溺愛してます。うちの子たちには、『自立禁止』と言ってあるんです。自宅にいる時は、基本的にずっとくっついていますね。離れるのはありえない。つねにギュッと抱きしめていたいんです。…こんなふうに、今は自分自身の母性をすべて犬たちに向けてしまっているので、どうしてもその感覚で考えちゃうんですけど。たとえば自分に子どもが生まれたとしたら、同じように溺愛してしまうんじゃないかな。将来、子離れできるのかなって、自分のことが心配になったりします」 関西で朝ドラを撮影していた時も、すぐに会えるよう2匹を連れていき、撮影中は母に面倒をみてもらったという。
自身も母に「溺愛」されて育ったのかと尋ねると、首を振った。 「溺愛というほどではなかったかな。ごく普通の、一般的な母と娘の関係だったと思います。専業主婦の母は、私たち3人きょうだいを大切に育ててくれました。たまに『宿題しなさい』とか言われることはありましたけど、ああしろ、こうしろと口うるさく言う母ではなかったです。上京してはじめてひとりになった時は、母のありがたみが身に染みましたね。今でも、久しぶりに一緒に過ごす時には、母に甘えられる幸せを感じます」 俳優という人生を選んだ戸田の背中をそっと押してくれたという母。 では、もしも自分の子どもが芸能界に入りたい、俳優になりたいと言ったら? 「ちょっと想像できないですけど……反対は、すると思います。本当に映画やドラマが好きで、私から見ても相当役者に向いているな、と思えたら、応援するかもしれないですけど。やっぱり、世間に顔を知られるということは、芸能人としてはありがたいことだとは思いますが、ひとりの人間としては、大変なことが多いですから。浮き沈みがあったり、いつ何が起こるかわからない。わざわざ危険を冒してほしくはないと思うんです」