4キャリア8社が災害時に“呉越同舟”の協定 25年度末の事業者間ローミングはどうなる?
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯電話キャリア4社とドコモ以外のNTTグループ4社が、大規模災害発生時の協力体制を強化することを発表した。2024年1月1日に発生した能登半島地震では、各社が現場で協力しながら、被害を受けた通信設備の復旧にあたっていたが、こうした取り組みを“仕組み化”することで災害発生時の連携を強化していくことが8社の狙いだ。 【画像】事業者間ローミングの行方 具体的には、各社が持つアセット(資産)を共同利用することを定める他、能登半島地震で効果を発揮した船上基地局の活用も推進していく。これと並行する形で、緊急時には事業者間ローミングを実施する検討も進んでおり、2025年度末ごろの導入を目指している。普段競争している各社が、災害時にどう協力していくのか。その枠組みを解説する。
能登半島地震で目立った事業者間協力、その連携を本格化
2024年の元旦に発生した能登半島地震では、土砂崩れや道路の崩壊により、基地局などの通信設備に多くの被害を受けた。基地局自体が倒壊してしまっていたことに加え、管路を通る通信ケーブルが寸断したことで基地局が機能しなくなるケースもあった。土砂崩れなどで道が途切れてしまったり、慢性的な渋滞が発生したりといったことも復旧を長期化させた。 こうした中、現場ではキャリア各社が会社の枠を超えて協力し、復旧にあたる場面が多く見られた。KDDIとソフトバンクが給油拠点を融通し合い、相互運用していた事例はその1つだ。事前の協定に基づき、KDDIがNTTの海底ケーブル敷設船「きずな」に乗り、ドコモとともに船上から電波を発射することでエリアを応急復旧できたのも、事業者をまたがった協力の事例といえる。 キャリア各社が実施する個別の対応だけでなく、復旧活動においてキャリア同士がいかに協力したかという点が焦点になったのは、これまでの大規模災害との大きな違いといえる。能登半島の地形的に各事業者が個別に復旧活動を進めていくのが難しかったことや、それぞれのリソースに差があったことなどが、協力を深める契機になった。 一方で、こうした事業者の協力体制が震災以前からきちんと準備されているかというと、必ずしもそうではない。ドコモのKDDIが展開した船上基地局のように、あらかじめ締結しておいた協定が生きたケースもあるが、こちらも、ソフトバンクや楽天モバイルを巻き込んだ枠組みになっていなかったのも課題だった。「競争の枠を超えて協力していけるところをいかに増やせるか」(KDDI エンジニアリング企画部 部長 小坂啓輔氏)が求められていたといえる。 そんな課題を認識していたドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのモバイル系キャリア4社と、固定回線を持つNTT東日本、西日本やNTTコミュニケーションの3社に持株会社であるNTTを加えた計8社で構築したのが、今回発表された協力体制だ。枠組みとしては、NTTグループとKDDIが取り組んできた「つなぐ×かえる」プロジェクトに、ソフトバンクや楽天モバイルが参画し、事業者間の連携を強化していく。