4キャリア8社が災害時に“呉越同舟”の協定 25年度末の事業者間ローミングはどうなる?
事業者間ローミングはこれから? 25年度末に向けた拡大にも期待
一方で、現状での連携はここまで挙げてきた3点にとどまる。2025年度末までをめどに導入準備が進められている事業者間ローミングについては、「協定の中に入っていない」(同)という。事業者間ローミングは、緊急通報だけでなく、一般の音声通話やデータ通信なども含めて利用が可能な「フルローミング」方式と、緊急通報の発信のみに絞った方式の2つが検討されてきたが、その両方式を実施する方向で、現在、具体的な運用や技術的な条件を議論しているところだ。 2024年3月に開催された検討会では、能登半島地震での有効性も検証された。総務省の「非常時における事業者間ローミングに関する検討会 第3次報告書」では、「携帯電話事業者で生じた支障の一部は、他携帯電話事業者のサービスエリア内であったことから、事業者間ローミングによる救済の効果があるものと想定された」と記載されており、当時、事業者間ローミングがあれば、効果を発揮できた可能性があることが示唆されている。 複数事業者のトラフィックをまとめて受け切れるかといった課題はあるが、もし事業者間ローミングが有効活用できれば、応急復旧するエリアを4社である程度分担し、最低限、電話だけでもできるようにする復旧を早められる可能性もある。4キャリアと固定通信事業者が一堂に会する今回の協定は、その運用方法を検討したり、テストしたりする場としてうってつけのようにも感じた。 事業者間ローミングとは少々性格は異なるが、能登半島地震では避難所を支援する際に、「リストを県からいただき、各社が連携した。ここはドコモ、ここはKDDI、ここはソフトバンク、ここは楽天モバイルと手分けをして、避難所の支援を行った」(磯部氏)という。楽天モバイルが設置した衛星をバックホールにした可搬型基地局は、「楽天モバイルの電波しか出せないが、この電波が行き渡る場所にWi-Fiルーターを設置し、他社のユーザーがスマホでWi-Fiを活用できるようにした」(同)。 技術的にはローミングで直接他社の端末を受け入れていたわけではないが、基地局とスマホなどの端末の間にWi-Fiルーターを介することで近い状況を作り出していたといえる。事業者間ローミングが可能になれば、その手法が1つ増える形になる。NTTの森田氏も「実現すれば(4社で)協調する手段が増えるので、活用できる状況があれば検討したい」と語っていた。「通信事業者全体が1つの企業として取り組む」(同)協定であるだけに、より深い連携にも期待したい。
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