大混戦の全日本大学駅伝から見えた箱根駅伝の行方とは…連覇の駒大が本命も有力校の主力級が揃わず勢力図が変わる可能性も
全日本で3位に入った順大は東京五輪3000m障害で7位入賞を果たした三浦龍司(2年)のスピードが魅力。前回は1区で区間10位に終わっていることもあり、本人は1区でのリターンマッチを熱望している。三浦の強烈スパートが炸裂すれば、箱根路でもトップを走ることができるだろう。チームは選手層が厚く、トラックのタイムも持っている。目標の「総合優勝」にどこまで迫れるか。 主力を欠いた出雲駅伝で3位を確保した東洋大は全日本で10位に沈んだ。しかし、敗因はハッキリしている。6区と7区で明らかなアクシデントがあり、失速したからだ。それでも5区終了時で5位につけていた。箱根では2年連続で5区を好走している主将・宮下隼人(4年)、出雲5区と全日本4区で区間賞を獲得したスーパールーキー石田洸介(1年)の走りに注目したい。 國學院大は「2年計画」の最終年を迎えて、戦力が充実している。出雲ではアンカーを任された平林清澄(1年)が熱中症で終盤に失速したが、2位を狙えるレースを見せた。全日本では過去最高となる4位に入っている。4年生が中心のチームだが、全日本では7区でルーキー平林が区間3位、最終8区で伊地知賢造(2年)が区間賞を獲得している。 早大は前回6位のメンバーが9人残っている。出雲と全日本は主力の欠場が響き、6位に終わったものの、全日本では5区で首位に立った。中谷雄飛(4年)、太田直希(4年)、井川龍人(3年)の10000m27分台トリオが中心だが、目標の総合優勝には5000mでチーム最速タイムを持つ千明龍之佑(4年)の復活が欠かせない。 2週間前の箱根駅伝予選会のダメージがありながら、全日本でシード権を獲得した明大と中大も強力だ。明大は箱根予選会で2位以下を4分以上も引き離してトップで通過。全日本でも7位に入っている。中大は9年ぶりに出場した全日本で8位に食い込み、箱根駅伝の10年ぶりシード権に弾みをつけた。 全日本には出場していないが、前回“サプライズ”を演じた創価大も忘れてはいけない。出雲駅伝は7位に終わったが、前回メンバーが7人残っている。特に2区候補のフィリップ・ムルワ(3年)は出雲3区で区間賞。5区候補の主将・三上雄太(4年)も前回(区間2位)の経験を生かした走りができるだろう。 前々回10区で区間新を叩き出し、前回4区でトップに立った嶋津雄大(4年)は日本インカレ10000mで6位に入るなど、トラックでも存在感を発揮している。1区がうまくハマれば、「3位以内」という目標達成に近づくことができるだろう。 箱根を目指す選手たちは、20km以上の距離に対応するトレーニングをこなしながら、トラック10000mでもタイムを狙っていくことになる。まだまだ“勢力図”は動くことになるだろう。いずれにしても各大学が正月の晴れ舞台をベストメンバーで迎えられることを祈りたい。 (文責・酒井政人/スポーツライター)