駿河台大”初切符”に拓大”落選”の箱根駅伝予選会…何が壮絶な争いの明暗を分けたのか…ペース配分と留学生の存在
真っ青な青空が広がっていた第98回箱根駅伝予選会(23日、東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地周回コース)。終わってみれば、昨年ほどの大波乱は起きなかった。エントリー上位10人の10000m平均タイム1位の明大がトップ通過を果たすと、同2位の中大が2位、同3位の日体大が3位。下馬評の高かったチームは順当に上位通過を決めた。 意外だったのは本戦に8年連続出場中だった拓大が55秒差で落選したことだろうか。一方で法大時代に箱根路を沸かせた徳本一善駅伝監督率いる駿河台大が初めて予選会を突破したのが最大の話題になるだろう。 今年も「10枚」のチケットをめぐる戦いは壮絶だったが、ボーダー争いを演じた大学はどこで明暗をわけたのか。
天候とコースが与えた影響
今大会はコースと天候がレースの流れを大きく左右した。従来は市街地や昭和記念公園内もコースになっていたが、新型コロナウイルスの感染予防対策で昨年と同様にクローズドスペースでの開催となった。具体的にいうと、立川市・陸上自衛隊立川駐屯地内の1周約2.6kmの滑走路を周回するコースだ。道幅が広く、起伏はまったくない。 昨年は雨で気温が下がり、風もなかった。その結果、順大が過去最速タイムとなる10時間23分34秒で突っ走り、通過ラインは10時間33分59秒と過去最高水準だった。この印象が強かったため、ほとんどの指揮官は「高速レース」になると予想していた。 しかし、今回は風が強く吹いていた。コース内は風をさえぎるものがない。スタート付近から1kmちょっとの直線は向かい風。反対に、スタート方向に戻る1kmちょっとの直線は追い風になった。 5km通過時の順位は1位立教大、2位明大、3位日大、4位大東大、5位流経大、6位国士大、7位駿河台大、8位東農大、9位慶大、10位関東学大。もちろん、このまま行くとは思わなかったが、例年以上に”荒れた入り”になった。
そして実力以上に飛ばした大学は距離が進むにつれて順位を下げていく。最終的には、立教大は16位、日大は21位、流経大は17位、東農大は18位、慶大は19位、関東学大は27位に終わっている。 指揮官たちが選手にどんなペースを指示したのか。昨年の結果に引っ張られ、速い入りを求めたチームは大苦戦した。 反対に日体大は5km通過時の11位から3位、中央学大は同15位から7位まで順位を上げたことになる。一番のジャンプアップは神奈川大だ。5km通過時で24位と大きく出遅れていたが、10kmで17位、15kmで7位と順位を上げて、最終的には5位で12年連続出場を決めている。 「ブロックされてうまく出られなかったんです。5km通過時が24位なんて初めてですよ。予定よりも20秒悪かった」と大後栄治監督。指揮官は相当焦ったようだが、序盤の出遅れが結果的にはいい方向に転がった。 2位以下を4分以上も引き離してダントツのトップ通過を決めた明大・山本佑樹駅伝監督も「全体的に30秒ぐらい遅かった。風の影響がだいぶあったのかなと思います」と話している。 例年トラックの持ちタイムはないが、ロードの強さには定評があった拓大はエントリー上位10人の10000m平均タイムで4位につけていた。しかし、今回はスピードを生かすことができなかった。「今年のチームはトラックで速さは上がりましたが、真の強さはありませんでした」と山下拓郎監督。風との戦いになったことで、例年以上に”強さ”が求められたレースになったようだ。 今年は、拓大、国士大、山梨学大、専大、駿河台大、大東大、日大、流経大、平成国際大、日本薬科大、武蔵野学院大、桜美林大がケニア人選手をエントリー。過去最多12人の留学生ランナーが出走した。出場41校のうち、29%もの大学に留学生がいたことになる。そして彼らの存在が結果に大きく影響した。 特にボーダーライン付近は留学生がいるチームがひしめいた。8位駿河台大(10時間44分47秒)、9位専大(10時間44分58秒)、10位国士大(10時間45分41秒)、11位拓大(10時間46分36秒)、12位大東大(10時間48分08秒)だ。