今、直面している過激化した振り子とは? 日中国交正常化50周年に考える
中国という振り子は質量が大きい
今、われわれが直面している過激化した振り子は、中国という巨大な質量をもつ隣国の軍事拡大である。それがクラッシュする最大の契機は、尖閣諸島にも近い台湾海峡にあり、クラッシュの相手は台湾とともに日米同盟とそれを中心とする「西側」であり、こちらも質量が大きいので、そこに生じる破壊のエネルギーも巨大なものとなる可能性がある。 中国という振り子は質量も振幅も大きい。毛沢東時代の晩期には「文化大革命」というきわめて過激な左翼思潮が燎原の火の如く燃え上がった。かなりの衝突と破壊が生じたが、それは中国内部の問題であり、対外的な影響は少なかった。その左の振り子がピークアウトすると、鄧小平の「改革開放」政策となり、経済的には市場主義化、外交的には西側との協調と、振り子が逆方向に大きく振れたのである。 習近平時代、振り子は再び振れ返している。しかしこれが革新(左派)の方向に振れているというべきかどうか疑問である。むしろ保守(タカ派・ナショナリズム)の方向に、すなわち右の方に振れているというべきかもしれない。というより、ここで社会問題を物理現象のアナロジーとして説明するのは、振り子の方向性よりもそのエネルギー状態を問題にしたいからである。そうとうに大きなポテンシャルになっているのだ。 われわれにできることは何か。国民の命を守ることを第一の目的とするなら、緊張関係にある国の国民感情の振り子をできるだけ低い位置に保つ(ポテンシャルを小さくする)努力をすることである。できればエネルギーが高まる初期の段階で抑え込むことだが、その時期を逸したら、静かに対抗策を練りながら、周囲と連携して、振り子の動勢を観察し、抵抗力を強めてその勢いを減衰させ、ピークアウトの時期をまつことである。思潮の過激化は必ずピークアウトの時期を迎える。 それでも抑えきれない場合には、そこに生じるクラッシュと破壊の規模をできるだけコントロールすることである。そのためには、このエネルギー現象を巧みに乗り切ることのできる辣腕のリーダーを選ぶ必要がある。さらに政治家、官僚、言論人などは、国民感情をできるだけ冷静な状態に保つ努力をするべきである。 しかしこれまでの歴史を見ても、これはなかなか難しい。最近、今の日本人は、思っていた以上に過激化しやすいような気がしてきた。 日中国交正常化50周年が、東アジア政治状況における過激化ピークアウトの契機となれば幸いである。という言葉で、本稿の締めくくりを推敲しているとき、北朝鮮のミサイル発射に対するJアラートが配信された。いつの世にも、過激な言動によって注目を集めたい人間がいるものだ。それが拡大して国家単位になったときが怖い。