「結婚できるようになったら、式に呼ぶからね」ゲイの結婚相談所が感じる「社会が生んだ」異性愛と同性愛の違い【いいふうふの日】
「異性愛と同性愛って、何か違いはありますか?」 ゲイ専用結婚相談所『ブリッジラウンジ』店長の田岡智美さん(@taoka_tomomi)は、これまで何度も、こう聞かれてきた。 【画像】男女と少し違う…!ゲイ向けお見合いの「紹介状」がこれだ 自身は異性愛者で、30代は男女の結婚相談所で働き、2016年からはゲイ同士のお見合いに向き合ってきた。その中で、「異性愛も同性愛も、望む人が好きな人と支え合って生きていくことは尊く、好きになる性以外は何も変わらない」と感じてきた。 一方で、「社会が両者に様々な違いを生んでいる」とも痛感してきたという。田岡さんは当初、取材でその内容を話すことに、強い葛藤があった。それは「当事者の方に『こんなに違うんだ』と認識させてしまうきっかけになるかもしれないと思ったから」だ。 だが今もなお、「パートナーシップ制度があるから、同性同士も結婚できる」と間違った認識を持ち、「LGBTQは権利を主張し過ぎだ」などと言う人も少なくないと痛感してきた。 田岡さんは「異性愛者の方には、自戒の念を込めて、自分たちが当たり前だと思っていることが、そうではない人がいることを知ってほしい。考えてほしい。それが、社会が変わる第一歩だと信じています」とし、自身が感じてきた等身大の実情を語ってくれた。 見えてきたのは、あまりにも「異性愛が前提」であることで、当事者にさまざまな生きづらさや困難を強いているという、社会の現在地点だった。【佐藤雄/ハフポスト日本版】 *ハフポスト日本版は「いいふうふの日」(11月22日)に合わせて、ゲイの恋愛・お見合いを特集しています。
◆カフェやプレゼント選びすら難しい。日常に根付く「異性愛前提」の生きづらさ
ーー男女と同性同士の恋愛について、田岡さんが感じる違いを教えてください。 根本的には、両者が違うというよりも、社会が違いを生んでいると感じます。その1つが、「お店選びや買い物のハードル」です。例えば会員様に、お見合いの成立後に行く飲食店について、「良いお店ありますか?」とよく聞かれるんですね。 最初は少し、不思議に思っていました。以前の職場は新宿、現在は渋谷にあり、情報も多いので、お店選びには困らないと思っていたからです。 ですが「席同士の距離が近すぎない」など、会話の内容を聞かれにくい環境を望む方が多いと気づきました。ゲイであることを、できるだけ知られたくないという思いからです。 でもそういったお店の情報は、検索してもあまり出てこない。だからブログで、おすすめのお店をまとめた記事を出したこともありました。 男女だったら事前に調べていなくても、ふらっと入れると思うんです。お店選びを1つとっても、同性同士の場合はハードルがある。人目を考慮し、話す場所として公園やカラオケのほか、早い段階でお相手を家に招く方も少なくないと感じています。 ーーお店でも、異性愛者のカップルしか想定していないことが多いように感じます。 そうなんです。飲食店以外でも難しさを感じる場面は多くあって。例えば「デートの準備」をするような、美容室や服屋です。 どんな髪型や服が良いか助言が欲しくて、店員さんに「デートなんです」と相談する。すると、異性から人気だとされるものを紹介されることがほとんど。社会で「異性愛」の前提があまりに根付きすぎていて、プロからアドバイスをもらうのも難しいのだと痛感します。 ーー売っているものも、異性愛が前提のものが多いですよね。 特に店頭に並ぶペアのものって、ほぼ全てが男女用なんですよね。ありがたいことに、成婚したカップルさんにお家に招いていただくことがあり、記念日や引っ越しのお祝いに、心ばかりのプレゼントを買うこともあります。 特に、カップルさんが2人で使う「夫婦箸」をあげたいと思った時。男性用と女性用の箸ならば、好きな柄を自由に選べるんです。ですが両方を男性用のものにするとなると、箱のサイズが合わなくて一つの箱に収められなかったんですよ。 でも、男性同士だから別々の箱で良いよねと妥協したくなくて。なんとか詰めてもらいプレゼントしたことがあります。 贈り物を見に行くたびに目にする「男女ペアの商品しかない光景」は、生きにくい社会の一部を見ているような感覚です。買う時は必ず「男性同士のカップルさん用」と伝えるようにしています。こうした声が届き、贈り物も多様化すると良いなと思っています。