「結婚できるようになったら、式に呼ぶからね」ゲイの結婚相談所が感じる「社会が生んだ」異性愛と同性愛の違い【いいふうふの日】
◆「ゲイってよく別れる」って本当?もし理由があるならば…
――婚活をサポートする中で男女と同性愛者の間に感じる違いはありますか。 ゲイの方向けのお見合いの仕事で感じるのは「まわりに頼らず、1人でなんとかしてきた人が多い」ということです。自分のことを話せないという前提があり、人に頼ったり甘えたりすることに慣れていないという方が少なくないと感じています。 例えばですが、私たちは結婚相談の仲介業なので、会員様が「お見合いした人が気になる」と教えてくれたら、男性同士でも男女の相談所でも当然、間に入ってお相手の気持ちを探ってみたり、時にうまくいくように助け舟を出したりするんですよね。 ですがゲイの方からは、「そういうのって、卑怯な感じがして」と相談を受けることもあるんです。異性愛の相談所では一度も言われたことがなかったので、最初は驚く部分もあって。そういった時は必ず、「ずるいことじゃないですよ」と伝えています。 例えば異性愛だったら、小中学校の時から、「あの子のこと好きだから、探ってきてほしい」と友人に頼む、ということってあると思うんです。最近はご友人や家族にカミングアウトしている会員さんも少しずつ増えてきていて。間接的かもしれないけれど、この仕事を通して「当たり前に話せる社会作り」の一員になれたらなと思っています。 ーー2人の関係を築いていく段階でも、異性愛と同性愛に感じる違いはありますか。 「パートナーの話を周囲にするハードルの高さ」が違うこと。それが、関係を続ける上での壁になる時もあると感じます。この仕事を始めてからずっと、多くの当事者から聞き、疑問に思ってきた言葉がありました。それは「ゲイはすぐ別れる」というものです。 本当にそうなのか。例えば「見た目がタイプ」で始まった恋愛は、セクシュアリティを問わず、うまくいきにくい傾向に感じていて。異性愛と異なり、職場や学校での「自然恋愛」が起きにくく、出会い方がアプリなどに限られるなど、続きにくい要素はあるかもしれません。 ですが、内面に惹かれ合い、長く関係を築く方がたくさんいるのも事実で。背景として子どもの有無を指摘する人もいますが、厚生労働省の調査を見ると、離別の大きな要因になるとは思えないんです。 ただもし「ゲイカップルはよく別れる」傾向が実際にあるならば、理由として、カミングアウトが前提となるため、周囲に「惚気話や相談をできる人」がなかなかいない、という面はあるかもしれません。 例えば男女のカップルだと、少し良いことがあって友達に惚気たり、うまくいかない時があっても悩みを相談したりすることで、自分の幸せを実感したり、他の人も似たような悩みを持っているんだと感じたりして、気持ちを立て直せることがあると感じてきました。 でもパートナーが同性の場合、旅行などの楽しい話や、お相手が靴下を脱ぎっぱなしにするみたいな愚痴など、何気ない話をするにもハードルがある。同性のパートナーを異性に置き換えて話そうとしても、本当に語りたい実情と少しずれてしまうこともありますよね。 関係が続くには、自分たちの幸せに共感してくれる身近な人や、日々感じるストレスを聞いたり、時にアドバイスしたりしてくれる人との関わりも必要だと思っていて。それが難しいから、関係を継続できなかったカップルさんも、少なからずいるように感じます。だから私たちも、成婚して卒業したカップルさんに、「いつでも連絡してください」と伝えています。 ーー誰にも話せないことで、緊急時の不安が大きくなる側面もあると思います。 病院での面会や手術同意はもちろん、その前段階の問題もあると思います。 以前、セクシュアリティを誰にも言っていないカップルさんに、「もし片方が、仕事中とかに倒れたらどうすれば良いんでしょうか」と聞かれて、ハッとしたんです。急に連絡がつかなくなっても、カミングアウトが前提となるので、会社、家族、友人…どこにも問い合わせることができない。 ブリッジラウンジに入る前に、ストーカーやネット上の金銭トラブル、デートDVの被害に遭ったけれども、パートナーが同性だから警察にも話せなかったという方もいらっしゃいます。そういった経験をした人は、新しい出会いにも、臆病になってしまうかもしれません。 同性愛の人たちにとって、お見合いや恋愛だけでなく、一人でいてもカップルになっても、たくさんの生きづらさや不安がある社会なのだと痛感しています。