川崎フロンターレの中村憲剛が貫いた引退の美学…40歳バースデー弾の翌日に電撃引退を発表した理由とは?
復帰したエスパルス戦、手応えを深めたグランパス戦、そしてまだ記憶に新しいFC東京戦の舞台がすべて等々力陸上競技場だった偶然に憲剛は言葉を弾ませた。新型コロナウイルス禍で入場制限が設けられながらも駆けつけてくれる、最も大切な存在として位置づけるファン・サポーターへ捧げる感謝の思いもまた、緊急会見を1日に設定した背景に存在している。 リーグ戦は残り9試合で、そのうちホームでの戦いは4つを数える。電撃的な発表で驚かせ、悲しませてしまった状況に頭を下げながら、憲剛は「(ファン・サポーターの)みなさんと等々力でも、アウェイでも一緒に戦えることを楽しみにしています」と笑顔で前を見すえた。 「(シーズンが終わる)ギリギリのタイミングではなく、自分がプレーできる状態で引退を発表したかった。一日も無駄にしたくないし、楽しみたいし、ともにタイトルを獲りたい。タイトルへの思いはいままで一番強いかもしれないので、チームメイトの負担にならないようにしたい」 異次元の強さで独走中のJ1で上位2位に入れば、変則形式で開催される天皇杯に準決勝から登場できる。元日に新国立競技場で待つ決勝戦まであと2ヵ月。最大で11を数えるフロンターレのバンディエラとしての戦いへ、憲剛は「すべてが今シーズンの終わりに向けて、集約されていくようなイメージがある」と笑顔を浮かべ、二冠を置き土産にしてのフィナーレを見すえていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)