日本初のデフリンピックまで1年、選手ら受け入れへバリアフリー化急ぐ…「理解進むきっかけ」期待
少ない手話通訳者
デフリンピックには五輪のように選手・関係者が滞在する選手村がない。来年11月の東京大会では全17の競技会場のうち、15会場が都内にあり、選手約3000人の大半は都内の宿泊施設に滞在することになる。聴覚障害のある観戦客が国内外から訪れることも予想される。
民間施設ではそれに対応できるだけのバリアフリー化が進んでいないのが実情だ。
都は17年度から、バリアフリー化に取り組む民間の宿泊施設に対し、改修費や備品購入費を補助しているが、聴覚障害者向けは計16件にとどまり、ここ3年間は0件だ。都内約750の宿泊事業者が加盟する都ホテル旅館生活衛生同業組合の担当者は、「外国人観光客の増加で人手不足が慢性化し、ほかのことにまで手が回らない」と話す。
手話通訳者の確保も難題だ。手話は各国・地域で異なるため、海外の選手と意思疎通するには、共通語として「国際手話」が用いられる。使用できる人材は国内に少なく、都は昨年度から講習会受講料の補助を始め、同年度は延べ331人を支援した。担当者は「普及につなげ、大会本番でも活躍してもらいたい」とする。
低い認知度、選手意気込み
デフリンピックの認知度は低く、都が昨年、18歳以上の都民に実施した調査では、パラリンピックを知る人が93%に上ったのに対し、デフリンピックは15%にとどまった。
過去4大会で計19個のメダルを獲得した競泳の茨(いばら)隆太郎選手(30)(SMBC日興証券)は、聴覚障害を理由にスポーツクラブの入会を断られた人の話をよく聞くという。「大切なのは互いを知ろうとすること。いい結果を残して注目を集め、聴覚障害への社会の理解が進むきっかけにしたい」と意気込む。
◆デフリンピック=英語で「耳が聞こえない」を意味する「デフ(deaf)」とオリンピックを組み合わせた造語。1924年にパリで初めて開催され、夏季・冬季大会がそれぞれ原則4年に1度行われる。100周年の節目の大会となる東京大会は来年11月15~26日、東京、福島、静岡の1都2県の17会場で21競技が行われる。