日本初のデフリンピックまで1年、選手ら受け入れへバリアフリー化急ぐ…「理解進むきっかけ」期待
聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の日本初開催まで1年を切った。多くの競技会場を抱える東京都内には期間中、世界70~80の国・地域から耳が不自由な選手たちが多く集まる。都内の宿泊施設や競技施設では、聴覚障害に対応したバリアフリー化が進むが、手話通訳者の育成など課題も残る。(上田惇史)
来客の知らせ、照明の点滅で
東京港に臨むホテル「グランドニッコー東京台場」(港区)の客室。インターホンが鳴ると室内と風呂場の照明が点滅を繰り返し、液晶モニターに廊下に立つ来訪者の姿が映った。広報担当の川島由美子マネジャーは「耳が聞こえなくても来客がわかるよう、光で知らせます」と説明した。
同ホテルは昨年夏、聴覚障害者の利便性向上のため、全882客室のうち、10客室にこの点滅機能を設けた。電動で角度を調節できるベッドといすを備えるなど、宿泊客の様々な障害に対応している。
同ホテルは、大会運営組織から外国人選手の受け入れを要請され、しゃべると言葉が表示される自動翻訳機器の導入や、従業員への手話研修を予定している。川島マネジャーは「課題は多いが、利用者のニーズに応えるのがホテルの役割。様々な想定をしながら、準備を進めたい」と話す。
今年度は、競技会場となる駒沢オリンピック公園など都有6施設で「光警報装置」の設置に着手。災害が起きると白色の光の点滅で知らせる仕組みで、来年夏までにトイレや更衣室などの天井計661か所に専用のライトを付ける。
音声を文字に変換して目の前のディスプレーに表示する機器も、スポーツ施設や図書館など約40か所に配備した。健常者の話した内容が言語で表示され、聴覚障害者は端末で文字を打ち込み、意思疎通する。駅にも設置を進める予定で、都国際スポーツ事業部の萬屋亮・担当課長は、「聴覚障害者だけでなく、耳の遠い高齢者の利便性向上にもつながる」と話す。