なぜ香川真司はJ復帰を蹴ってベルギー1部シントトロイデン移籍を決断したのか…「もっともっと進化したい」
何度もオファーを出してきた古巣セレッソにも、前回のロシアワールドカップでホットラインを形成したMF乾貴士が加わった。こうした状況を前にして「僕自身も正直、考えるところがありました」と一時はJリーグへの復帰も検討したと明かす。 それでもヨーロッパでの挑戦を継続させた理由は、フリーになった直後にシントトロイデンから届いた、香川の胸を打つ熱いオファーだった。移籍合意が発表されたクラブの公式ウェブサイト上で、立石CEOはこんな声明を綴っている。 「STVV(シントトロイデン)にとっても香川選手にとっても、新しいチャレンジとなります。みなさんが持っている香川選手のイメージとは違うものを、私たちは生み出したいと思います。STVVがさらなる高みを目指すために彼の進化に懸けてみます」 香川に先駆けてベルギーからオンライン会見に登壇した立石CEOは、香川との間で共有された「新しいチャレンジ」や「異なるイメージ」に具体的に言及した。 「どのクラブも彼を獲得する際に、昔のイメージを持っていたと思います。彼の全盛期のパフォーマンスはそれほど大きなインパクトをヨーロッパへ与えましたが、私たちは監督とも相談した結果、彼が中心となって攻撃のタスクを担う、という部分も含めてボールをたくさん触りながらゲームを落ち着かせ、コントロールするなかで『新しい香川真司を作っていこう』と。それがチームの強化につながる、という話をさせていただいた」 立石CEOが説明した中盤の役割は、ほとんどがボランチに託される。ドルトムントやプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドと、ヨーロッパの第一線でトップ下を担ってきた香川は、提示されたオファーを前にして「そういうチャレンジを、自分は必要としている」とモチベーションが高まってくるのを感じずにはいられなかった。 「チームが変わり、監督も代わればサッカーも常々変わるし、求められるものも変わっていく。今回も新しいチームの監督と具体的に話をしたなかで、非常に魅力的で、自分を大きく成長させてくれると感じました。僕自身、もっともっと進化したいと思ってきたし、そのポジションのなかで新たな自分をまた築けていけるんじゃないかなと」 もちろん、すぐにポジションが用意されているわけではない。 PAOKに所属した2021年を振り返れば、公式戦のピッチに立ったのは12試合、プレー時間はわずか476分にとどまっている。前半をラ・リーガ2部のサラゴサでプレーした2020年も、後半は無所属状態になって一度もプレーしていない。 特に大きな期待を背負い、昨年1月に鳴り物入りで加入したPAOKで直面した試合に出られない日々を、香川は「非常に厳しい時間でした」と振り返る。 「いろいろなことを考えさせられる時間でもありましたが、この1年が自分にとって大きな意味のある1年だったと、未来の自分が言えるようにしていかなければいけない。あの経験があったからこそ自分はまた強くなれたということを、簡単ではないとわかっていますけど、僕はピッチの上で証明していかなければいけないと思っているので」