なぜ高校サッカーVの青森山田は”ラフプレー論争”を凌駕するほど強かったのか
巧さと華麗さに力強さ、そしてファウルと紙一重の激しさを融合させた至高の90分間の末に、青森山田(青森)が3年ぶり3度目の頂点を手繰り寄せた。 第100回全国高校サッカー選手権大会の決勝が10日に国立競技場で行われ、4大会連続で決勝を戦う青森山田が前後半に2ゴールずつをゲット。初めて決勝に臨んだ大津(熊本)にシュートを一本も打たせない完璧な守備も披露して4-0で快勝した。 大会後のFC東京入りが内定しているキャプテン、MF松木玖生(3年)は2点のリードで迎えた後半10分にダメ押しとなる3試合連続ゴールを決めた一方で、ピンチになりかけた前半32分にはファウルで相手を止めてイエローカードをもらうなど、今シーズンの青森山田が志向してきたサッカーを具現化させて歓喜の雄叫びをあげた。
エース松木「自分が犠牲になっても」
ピッチ脇の集音マイクが、御厨貴文主審の肉声を拾っていた。 「フェアにいこう」 松木へイエローカードを提示し、試合を再開させる直前のひとコマ。1年生からピッチに立ってきた選手権で、通算15試合目にして初めて警告を受けた松木は「ボールにいっている」とポーズを取りながら、すぐに納得した表情に切り替えた。 両チームともに無得点で迎えた前半32分だった。右サイドからMF藤森颯太(3年)が放ったクロスがはね返され、こぼれ球を拾った大津のキャプテン、MF森田大智(3年)が自陣からドリブルを開始してカウンターを仕掛けた直後だった。 追走した松木は森田の前方に味方がいない状況を察知し、敵陣の中央付近で後方からスライディングタックルを見舞った。すかさず御厨主審が笛を吹いた。 そのまま森田にドリブルで抜け出されていたら、大津に決定的なチャンスが生まれていたかもしれない場面。イエローカードを覚悟の上で松木は大津の攻撃の柱を止めた。 高校最後の公式戦である選手権にかける思いを松木はこう語った。 「1年生のときはすごく自由にやらせてもらっていて、2年生になると個でいきたいという気持ちが芽生えてきたんですけど、3年生で迎えた最後の大会に関しては自分が犠牲になってでもチームを勝たせたい、という気持ちがありました。自分は全国の(選手たちの)なかでも、この選手権で一番悔しい思いをしてきたので」