なぜ高校サッカー決勝進出を決めた青森山田エース松木玖生はスーパーゴールにも笑わなかったのか…名将に捧げた鎮魂ゴール
3大会ぶりの王座奪還を目指す青森山田(青森)が大量6ゴールを奪う圧勝で、前日7日に死去した小嶺忠敏さんに率いられた国見(長崎)が2000年度の第79回大会からマークした、戦後の最長記録に並ぶ4大会連続の決勝進出を決めた。 第100回全国高校サッカー選手権の準決勝が8日、8大会ぶりに試合開催会場に加わった“聖地”国立競技場で行われ、青森山田が6-0で高川学園(山口)を一蹴。2点をリードして迎えた後半12分には卒業後のFC東京加入が内定している、キャプテンのMF松木玖生(3年)がスーパーゴールを決めて勝利を決定づけた。 トリッキーなセットプレーを武器とする高川学園に一度もコーナーキックを与えず、後半にはシュートすら打たせない完璧な勝利をあげた青森山田は国立競技場で10日に行われる決勝で、選手2人に新型コロナウイルス陽性者が出た関東一(東京B)の辞退で初の決勝進出を決めていた大津(熊本)と対戦する。
今大会3ゴール目
わずか4秒の間に華麗かつ豪快なプレーを次々と繰り出した松木が、青森山田の勝利と4大会連続の決勝進出を確実にするスーパーゴールを叩き込んだ。 2点をリードして迎えた後半12分だった。右サイドの深い位置で一度ボールを失ったMF藤森颯太(3年)がすぐに奪い返し、さらにタッチライン際で2人を背負いながら踏ん張る。こぼれたボールを相手がクリアしきれなかった直後だった。 藤森をフォローしようと近くにいた松木は、目の前に弾んだルーズボールを自らの間合いに収めると、すかさずゴールラインに並行する形でゴール方向へ突進する。高川学園のDF山崎陽大(3年)、MF桑原豪(3年)も追走するが届かない。 危機を察知した高川学園のキャプテン、MF北健志郎(3年)が止めようと目の前に現れる。松木は流れを止めずに、利き足とは逆の右足かかとでボールに軽くタッチ。左足の後ろ側を通過させながら、自らの左前方にボールを運んだ。 瞬時に繰り出された高度なテクニックは同時に、松木の身体に阻まれる形で、北がまったくボールに触れない状況をも生み出した。瞬く間にペナルティーエリア内へ侵入した松木の視界には、しかし、高川学園の2人の選手がさらに立ちはだかった。 ゴールポスト際を狭めるGK徳若碧都(3年)と、その左側にいたDF加藤寛人(3年)との隙間は1メートルあるかないか。それでも松木は迷わずに、角度もまったくない位置から左足を一閃。強烈なシュートを反対側のサイドネットへ突き刺した。 ボールを収めてから、今大会3ゴール目を決めるまでに要した時間はわずか4秒。華麗さと豪快さを同時に発動させた松木は、しかし、笑顔を浮かべなかった。 左腕に巻いていた喪章を取り外して国立競技場の空へ掲げ、両手を合わせながら目を閉じた。試合後のオンライン取材でパフォーマンスの意味を問われた松木は、前日7日に76歳で死去した長崎総合科学大付属(長崎)の小嶺監督の名前をあげた。 「直接的な関わりというものはないんですけど、高校サッカーを切り開いてきた方であるので、その方へ向けた得点という意味でした」