終活のプロが教える子どものいない夫婦の老後準備。遺言書を書いても、配偶者に100%遺産を渡せないケースも
◆おふたりさまの場合は、遺留分を請求される心配が(ほとんど)ない ただし、遺留分を受け取る権利があるのは、法定相続人のうち「配偶者」と「直系卑属(子や孫)」、「直系尊属(親や祖父母)」です。 そのため、ある程度の年代に達したおふたりさまの相続の場合、配偶者以外の法定相続人は「傍系血族(兄弟姉妹)」しかいない場合が多く、その場合は遺留分がありません(図表2-1)。 そのため、法的に有効な遺言書があれば、配偶者に100%遺産を残すことができます。 なお、おふたりさまであっても、再婚で相手や自分に子どもがいる場合は、遺留分の請求によって遺言通りの相続にならない可能性があります。
◆「おふたりさま」が二人とも亡くなった時、誰が…? Q:ふたりとも亡くなった場合、遺言を実行してくれる人は誰ですか? A:遺言書に「遺言執行者」を指定しておきましょう。 遺言書が実際に活用されるのは、本人が亡くなった後のこと。すでに本人がこの世にいないだけに、遺言書に書いてあるだけでは、その内容を実現することはできません。 そこで、遺言書には遺言の内容を実現してくれる人を指定する仕組みがあり、その役割の人を 「遺言執行者」と呼びます。 本人に代わって遺言の内容を実現してくれる「遺言執行者」は、遺言の中で指定することができます。 〈遺言執行者の業務〉 ・遺言執行者になったことを相続人に通知する・遺言の内容を相続人に通知する・被相続人の相続財産調査を行い、相続財産目録を作成し、相続人に交付する・遺言書の内容を実行し、完了後相続人に報告する 遺言執行者は、不動産や預貯金、有価証券の相続や遺贈手続きといった通常の相続手続き以外に、子どもを認知する「遺言認知」や、虐待や重大な侮辱をした相続人から相続の権利を取り上げる「相続廃除」の手続きも行うことができます。 遺言認知や相続廃除は被相続人が生前に行うことも可能ですが、複雑な事情が絡むことなので、生前に行うことが難しい場合、遺言書によって自分の死後に実行することができます。
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