終活のプロが教える子どものいない夫婦の老後準備。遺言書を書いても、配偶者に100%遺産を渡せないケースも
2023年の国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」によると、50歳時の未婚率は増加傾向にあります。人生の選択は人それぞれであり、結婚する、子どもをもつことが当たり前の時代ではなくなっています。ここでは、お子さんのいないご夫婦を、「おふたりさま」と呼び、焦点をあてています。行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家が、「おふたりさま」はもちろん、おひとりさま・子どもに頼りたくない人も、知っておきたい知識をまとめた、『「おふたりさまの老後」は準備が10割:元気なうちに読んでおきたい!68の疑問と答え』から一部を抜粋して紹介します。 【書影】子供のいない夫婦の「老後」「相続」の課題や悩みを、終活のプロから学ぶ『「おふたりさまの老後」は準備が10割:元気なうちに読んでおきたい!68の疑問と答え』 * * * * * * * ◆じつはおふたりさまに必要な老後準備、トラブル回避のための「遺言書」 Q:残された配偶者にすべての財産を渡すためにはどうすればいいですか? A:「遺言書」を書くことで、配偶者に100%財産を残すことができます(例外あり)。 おふたりさまのどちらかが亡くなって相続が発生すると、配偶者の兄弟姉妹(父母)と、何をどう分けるかについて話し合う、遺産分割協議をしなければなりません。 「夫婦で築いてきた財産なのに、相手の兄弟と話し合わないといけないなんて……」と思ったあなた。その話し合いを回避する、シンプルな解決策があります。 それが、「遺言書」です。 おふたりさまの場合、故人による法的に有効な遺言書があれば、遺産についての話し合いをせずに相続手続きを進めることができます。 法的に有効な遺言書があれば、原則、遺言書に従って相続されるからです。 遺言書を作成しておくことで、遺産分割についての話し合いが不要になるだけでなく、遺産相続の手続きそのものがスムーズになるのです。
◆遺言書を書いても、配偶者に100%遺産を渡せないケースもある? Q:遺言書さえあれば、配偶者は本当にすべての遺産を受け取れますか? A:おふたりさまの場合、兄弟姉妹には「遺留分」がないので、親亡きあとであれば、配偶者に100%財産を渡すことができます。 法的に効力のある遺言書があれば、相続人は遺言通りに遺産を受け取れる……はずですが、そういうわけにはいかないケースがあります。 それが「遺留分侵害額の請求」です。 遺留分とは、一定の相続人が受け取る権利を主張できる相続分のこと。もっといえば、遺言を無視して遺産を受け取る権利のことです。 たとえば、配偶者のように遺産が入ることを期待できる関係の人が、遺言書によって何も相続できないとなってしまったら、人生設計が大きく崩れてしまいます。 そのため、一定の関係性をもつ相続人は遺産を最低限受け取れるよう、遺留分という「最低限の取り分」が定められています。 遺言書がこの遺留分を侵害していると、その分の相続財産を受け取った相続人に対して「私の遺留分を返してください」と請求することができるわけです。 遺留分は、ほとんどの場合法定相続分の2分の1と決められています。 たとえば故人に2人の息子がいて、「財産はすべて長男に渡す」という遺言書があったとしても、次男には遺留分があるため、法定相続分の2分の1を受け取る権利があります(父母など直系尊属だけが相続人の場合、遺留分は法定相続分の3分の1)。
【関連記事】
- 終活のプロが教える、子どものいない夫婦が陥りがちな「相続」の課題。自分も〈おひとりさま〉になることに気付かない〈おふたりさま〉は老後の準備が甘い傾向に…?
- 子どものいない夫婦〈おふたりさま〉相続の落とし穴。夫の財産を妻が全部相続できない?知っておきたい「相続の基本ルール」
- 子どものいない夫婦、夫が50歳で亡くなり、分譲の自宅マンションの老朽化に直面。管理組合に参加すべき理由とは?
- 老後のひとり暮らしに立ちはだかる<5つの壁>とは。自由なおひとりさま生活が抱える「心と体」両面のリスクを考える
- 自宅を担保にお金を借りる《リバースモーゲージ》老後資金を残しつつ、リフォームや建て替えも。目的別活用事例と注意点