痛みの県民性 「蚊に噛まれた」っておかしい? 痛みの表現、我慢への耐性さまざま 痛み学入門講座
痛みなどとして感じる何らかの刺激を受けたときの反応、表現の仕方が地域によって異なるのが面白い。この点に関して私が日頃から特に気になっていたのが、蚊に刺されたときの表現である。私は、蚊に「噛(か)まれた~」と口にしてしまうが、通じないことがある。「食われた~」とも言うが、これは失笑の対象となる。どうやら関西圏以外では「刺された」の方が通りが良いようだ。そこで今回は、それらの県民性について考えてみようと思う。 大手製薬会社、ファイザーの日本法人が実施したインターネットアンケート(平成29年、回答者8924人)の結果を紹介する。「長く続く痛みを感じている場合、我慢しますか?」との質問に対して「必ず我慢する」「だいたい我慢する」と答えた割合が最も多かったのは栃木で81・6%、愛媛78・8%、和歌山78・1%と続く。少なかったのは神奈川68・3%、静岡69・7%、埼玉69・8%であった。 同じく「長く続く痛みは治らないと諦めていますか?」との質問で「非常にそう思う」「ややそう思う」は、愛知が75・7%、鹿児島が74・6%、千葉が74・5%と多く、少なかったのは沖縄60・6%、大分61・9%、徳島62・1%の順であった。この結果を分析しても一定の傾向はみられないなあ。栃木県民が我慢強いといえるのかなあ? では、痛みの表現方法はどうだろうか。一般的に痛みは擬音語、擬態語(オノマトペ)で表現することが多い。炎症による痛みであれば「ヒリヒリ」「ズキズキ」、一方で〝神経障害性疼痛〟(いわゆる神経痛)では「ピリピリ」「ビリビリ」が多い。 そこで、オノマトペによって痛みの原因を分類できないか、とする試みが医学の世界でも古くから行われている。1975年に発表された『マクギル疼痛質問票』が有名だ。日本語訳版も作成されてはいるが、言葉のニュアンスを十分に反映しているとはいえず、方言が関わってくればなおさらである。 痛みを表す方言(お国言葉)を少し紹介しておこう。「ひらつく」「ひらめく」は皮膚がヒリヒリと痛むことであり、秋田、富山、九州東部、鹿児島の方言である。「せく」は胸や腹が締め付けられるように痛むことで、中国、四国、九州地方。「ずいつく」は高知で、きりでえぐられるように痛むことを指す。