井岡一翔への「夢みたいな」代役世界挑戦権を得た“リトル・パッキャオ”福永亮次は番狂わせのドラマを起こすことができるのか?
プロボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者、井岡一翔(32、志成)に大晦日に大田区総合体育館で挑戦する同級6位で日本&WBOアジアパシフィック“2冠王”の福永亮次(35、角海老宝石)が21日、都内の角海老宝石ジムで会見を開き、急遽、決定した世界戦への意気込みを語った。一人親方として型枠大工の仕事をしている“大工ボクサー”でもある福永は、降ってわいた大チャンスに「記念マッチで終わらせない。大晦日に倒して勝ったらめっちゃヒーロー」と、大番狂わせを起こすことを宣言した。35歳4か月の福永が、世界王座初奪取に成功すれば、2006年に35歳0か月でWBC世界フェザー級王座を獲得した越本隆志氏を抜き、日本人男子の最年長世界王座初奪取記録となる。
「記念マッチでは終わらせない」
井岡の統一戦中止のニュースはネットで知った。SNSなどを通じて「福永が代替相手では?」と盛り上がったそうだが、当の本人は「ないやろ」と、「オミクロン株」の水際対策の影響で来日できなくなったIBF世界同級王者、ジェルウィン・アンカハス(29、フィリピン)の代役に指名されることなどついぞ考えていなかった。 井岡のインスタをのぞくと家族と食事している光景が上がっていた。実際には、減量食なのだが、「めっちゃ飯を食べていた。やっぱり(大晦日の試合は)なくなったんや」と納得していたが、数日後に事態が急変した。 品川区のワンルームマンションの建築現場で仕事をしている途中に奥村健太トレーナーから代役に指名されたとの連絡が入ったのである。 「夢かなと。ビックリしすぎて迷った」 即答はできなかった。 15歳の頃から、父親の職業を追いかける形で、建物の土台を作る型枠大工として働き始め、最初は雇われだったが、数年前に一人親方として独立した。当初、来年1月15日に防衛戦が組まれていたが、年内ギリギリまで仕事を入れていた。その現場を勝手にほっぽり出すわけにはいかない。豊島区にある角海老宝石ジムへ車を走らせる間に福永は取引先に連絡をして調整に回った。 「ボクシングに専念して下さい」 発注元の社長の理解を得て、ジムに着く頃には気持ちは固まっていた。 「心が決まったのでやります」 ジムの関係者にそう伝えた。 この日の会見では、緊張を解きたいと開始時間の15分も前からリング内に設置されたイスに座りスタンバイしていた。覚悟が伝わってきた。 「記念マッチで終わらせない。人生をかけてベルトを取りにいく。(井岡は)次の(アンカハス戦の)調整試合にしか思っていないと思う。そこを全部つかみとる。井岡選手は、お手本のような選手。真っ向勝負。小細工は通用しない。熱く感動するような試合を見せていけたらいい。大晦日に倒して勝ったらめっちゃヒーローかも」 代表質問をしたインタビュアーに「勝算はあるか?」と聞かれ「ある」と返したが、続けて「そのパーセンテージは?」とつっこまれ答えに窮した。 「今は6-4くらい。むこうが6。でも負ける気持ちでリングには絶対上がらない」