統一戦中止で「心に穴があいた」井岡一翔はなぜ大晦日のリングに立つのか…「新型コロナ禍だからこそ挑まねば」の信念
プロボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(32、志成)が20日、オンラインで会見を開き、急転、大晦日に大田区総合体育館で防衛戦を行うことになった同級6位で日本&WBOアジアパシフィック王者、福永亮次(35、角海老宝石)との試合に向けての決意を語った。当初予定されていたIBF世界同級王者、ジェルウィン・アンカハス(29、フィリピン)との統一戦が、政府の「オミクロン株」の水際対策の影響により中止となり「心に穴があいた」ほどのショックを受けたが、「戦い続けなければならない」と気持ちを切り替えて代替試合に挑む。すでにアンカハスサイドとは、互いに1戦を挟み、来春以降に対戦することで合意しているという。
「目標がなくなり気持ちの整理がつかなかった」
「心に穴があいた感じでした」 ようやく決まった悲願のアンカハスとの統一戦が、政府が緊急決定した「オミクロン株」の水際対策の影響で中止になったのが、今月3日。井岡は、その瞬間の気持ちをこう表現した。 「望んでいた統一戦が決まって、気持ち的にも最高潮で大晦日に向けて作っていたんで、中止と聞いたときは、なかなか受けいれられなかったり、信じられなかったり、どうしていいかわからなかった。こういう形で中止になるとは想像もつかなかった。いきなり日常が変わった。目標がなくなり…聞いてから1日、2日は気持ちの整理がつかなかった」 4階級制覇を成し遂げたのが2019年の6月。以降、2年越しで統一戦の実現を訴えてきたが、4本のベルトのうちWBCとWBAの2本は、ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が持っており、しかも、前WBA王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との再戦が決まっているためターゲットはアンカハスしかいなかった。難航していた交渉がようやく合意に達したと思ったところに、予期せぬオミクロン株の脅威で中止となった。井岡の精神状態がパニックになるのも理解できる。 だが、井岡は、その日もジムに足を運び、トレーニングをした。大晦日にむけての体重を作るための減量メニューを変えることもなかった。これが10度目の大晦日決戦。クリスマスなど師走の年末イベントは、すべて試合のために封印する生活をずっと続けてきた。いつのまにか、それが井岡にとっての師走の日常となり「試合がなくなったから今年はゆっくりしようという気分になれなくて。一回入れたスイッチを切れなかった」という。