井岡一翔への「夢みたいな」代役世界挑戦権を得た“リトル・パッキャオ”福永亮次は番狂わせのドラマを起こすことができるのか?
実績も実力も格上の4階級制覇王者に“番狂わせ“を起こす準備はできている。 朝、夜の2部練習で追い込んでの“突貫調整”。減量もすでにリミットまで3.5キロとなっていて不安はない。総スパー数は50に満たないそうだが、10月に無敗の梶颯(24、帝拳)を判定で破った試合の前の「練習の貯金がある」という。 「井岡選手は気持ちも強い。全部を兼ね備えている。僕が負けていないのは、気持ちの部分とパンチ力」 一撃必殺のパンチ力が福永の魅力。 「挑戦者なんで、がんがんいこうかなと」 サウスポースタイルからの右のフックと左ストレートが武器だ。大工の現場で、重い荷物を運び、特大のハンマーを打ち続けてきたことで、ナチュラルパワーがついた。 「手首、拳、関節が強くなった」 それが15勝(14KO)4敗の高いKO率を生むパンチ力の源だ。 だが、井岡は鉄壁のディフェンスを誇る。 一発もかすらない可能性もある。 「そのときに当たるパンチがポイントになる。(井岡のこれまでの)サウスポーに対する試合を見てもディフェンスがうまい。どれが当たるのか。(リング上で)対峙したら、これが当たるというパンチがわかる」 奥村トレーナーが補足する。 「当たるパンチもあるとは思う。井岡選手は頭がいいので、当たっても、それが当たらないようにすぐに変えてくる。こっちは、その上をまた考える。心理戦と駆け引き」 ジャイアントキリングを起こす根拠もある。 日本で4人目となる地域タイトル3冠を獲得してからの急成長だ。 福永がプロデビューしたのは26歳。遅咲きだ。 リーマンショックで大工の仕事が減り、ヤケ酒を飲み「ケンカばかりしていた」鬱憤を晴らそうと、たまたま大阪府高槻市の自宅近くに移転してきたエディタウンゼントジムに入門したのがきっかけ。 プロになるつもりはなかったが、「そんなに毎日練習するならプロになれば」と当時のトレーナーに背中を押されてプロライセンスを取り、大工の仕事の関係での上京を機に宮田ジムへ移籍して全日本新人王を獲得したのが2016年。30歳だった。 だが、以降「伸び悩み」(福永)、連敗を喫したこともあって自らに限界を感じ一度グローブを吊るした。角海老宝石に移籍して現役復帰したのは1年後。 「(ボクシング)中毒みたいなものがあるんですかね」