糖尿病を放置すると“足を切断する”可能性も…「三大合併症」について医師が解説
糖尿病の三大合併症②「糖尿病網膜症」
編集部: 続いて、糖尿病網膜症について教えてください。 中尾先生: 目の裏側には、光や色を感じ取る神経細胞が並んでいる「網膜」という膜があります。そこにも、細い血管が酸素や栄養を送り届けていますが、その細い血管に問題を起こしてしまうのが網膜症です。初期であれば、血液が漏れて小さな血だまりを作ったり、血液中の成分が網膜に付着したりします。進行してくると、血管が詰まって部分的に酸素が行き渡らない領域が生まれます。さらに進行すると、目の内側で大きな出血(硝子体出血)を起こしたり、網膜剥離を起こしたりすることがあります。 編集部: 網膜症ではどのような症状が出るのでしょうか? 中尾先生: 最終段階に来ると、硝子体出血や網膜剥離によって、ある日突然視力が大幅に低下することがあります。しかし、それまでは無症状のことが多いですね。成人が失明する原因となる病気として、糖尿病は常に上位に入っています。 編集部: 直前まで無症状なのは怖いですね。網膜症を予防する手段はあるのでしょうか。 中尾先生: 「進行させない」という意味では、どの合併症も血糖管理が重要なのは言うまでもありません。特に網膜症について言えるのは、糖尿病がある方は全員、症状がなくても必ず定期的に眼科を受診することが重要です。
糖尿病の三大合併症③「糖尿病性腎症」
編集部: 最後は糖尿病性腎症についてお願いします。 中尾先生: 腎臓は、体内にたまった毒素や老廃物を、「尿」という形で外に出してくれる臓器です。ここにも細い血管がたくさん使われているため、高血糖で細い血管に問題が生じると、毒素や老廃物を外に出せなくなったり、身体に必要な成分まで一緒に外に出してしまったりします。 編集部: 何か特徴的な症状はあるのでしょうか? 中尾先生: かなり進行してこない限り、はっきりとした症状は出ません。かなり進行して腎臓が働けなくなり、命に危険が及ぶくらい毒素や老廃物がたまるようになってしまうと、「透析」という処置が必要になります。 編集部: 透析とはどんな処置ですか? 中尾先生: 一般的な「血液透析」の話をすると、血液を機械に通して、腎臓の代わりに毒素・老廃物を除去してもらう処置になります。これを週3回、1回4~5時間かけておこないます。 編集部: 大変な処置ですね。腎症が進行しているかはどうやって把握するのですか? 中尾先生: 病院の検査で把握することになります。典型的な進行のパターンとしては、まず尿検査でタンパクが出るようになり、進行してくると血液検査で腎臓のはたらきを示す値(eGFR)が徐々に低下していきます。