糖尿病を放置すると“足を切断する”可能性も…「三大合併症」について医師が解説
糖尿病の三大合併症①「糖尿病性神経障害」
編集部: 糖尿病性神経障害とはどんな合併症ですか? 中尾先生: 糖尿病性神経障害は、大きく分けて「末梢神経障害」と「自律神経障害」に分かれます。「末梢神経」は手先や足先などを走る細い神経で、「自律神経」は内臓のはたらきを24時間調節してくれている神経ですね。糖尿病の末梢神経障害では、感覚の異常を起こすことが多いと言われています。具体的には手先や足先のビリビリとした痺れ・痛みや、手袋や靴下を履いているような感覚の鈍さなどがあります。痛覚も鈍るため、怪我や火傷をしたことに気づかなくなることもあります。 編集部: 怪我や火傷に気づけないとどうなりますか? 中尾先生: 怪我や火傷をしたことに気づけないと、消毒したり絆創膏を貼ったりといった適切な処置がなされず、傷口が不衛生なまま放置されてしまいます。特に足の裏は、自分からは見えない上に、普段から不衛生な環境にさらされていますからね。傷口から細菌が侵入して繁殖してしまうと、ひどい場合には足を切断しないと命が助からない状況に陥ってしまうこともあります。 編集部: おそろしいですね。末梢神経障害だけで足を切断しないといけなくなる方は多いのでしょうか? 中尾先生: 足の切断まで至るケースは、末梢神経障害に加えて、動脈硬化で足の血流も悪くなっている方に多く起こります。足の血流が保たれていれば、傷を治すための成分や、侵入してきた細菌を倒す免疫細胞が傷口までちゃんと届くので、そこまで悪化せずに済むことが多いですね。怪我や火傷にいち早く気づいて、適切な処置をおこなうことが重要です。そのため、特に見逃しやすい足については、「日頃から傷ができていないか」「皮膚の異常はないか」などをチェックすること(フットケア)を意識しましょう。 編集部: なるほど。もう一つの自律神経障害ではどのような症状が出ますか? 中尾先生: 自律神経障害では内臓のはたらきが悪くなってしまいます。たとえば心臓や血管の動きの調節が悪くなると、立ち上がったときに充分な血液を脳まで送ることができず、起立性低血圧(いわゆる「立ちくらみ」)が起こります。ほかにも、胃や腸の動きが悪くなれば食欲不振や便秘・下痢を起こしたり、膀胱の動きが悪くなれば尿からの感染症を起こしやすくなったりします。男性であれば勃起不全も糖尿病の自律神経障害の代表的な症状の一つです。