「密を回避」「予想と違った」コロナ禍の聖火リレー 岐阜で聞いたランナーと沿道の声
今夏に予定されている東京五輪の聖火リレーが3月25日から始まっている。福島第一原発事故からの復興を図る福島県からスタートし、聖火は全国47都道府県を約1万人のランナーによって順々に巡る予定で、7月23日に開会式が開かれる東京・国立競技場を目指す。 【写真特集】馬籠・郡上・関ケ原…岐阜県内を巡った聖火リレー 東京五輪は昨年、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で1年延期され、聖火リレーも中止された。今年に入ってもコロナの収束はまだ見通せない状態で、全国で再び感染が広がりつつある。公道での聖火リレー中止を発表した自治体もある。 全国で5番目のリレー区間となった岐阜県では、聖火が4月3日から2日間かけて県内の観光スポットや歴史的名所のある11の市町を回った。コロナ禍の聖火リレーはどうだったのか。4つの中継地点で沿道の人たちとランナーの声を聞いた。
●旧中山道の宿場町「馬籠宿」
岐阜県内の聖火リレーは4月3日朝、中津川市の馬籠(まごめ)宿から2日間の日程でスタートした。近くの小学校では桜も咲き誇る中、快晴の下で出発式が行われた。 岐阜県の東端にある馬籠宿は、江戸幕府が整備した江戸と京を結ぶ旧中山道の宿場町で、江戸・板橋宿から数えて43番目にあたる。
この地に生まれた明治から昭和の詩人・小説家である島崎藤村が代表作「夜明け前」で「木曽路はすべて山の中である」と書き出した通り、のどかな山あいにあり、今でも往時の宿場町の雰囲気が残る。 馬籠宿では、馬籠宿駐車場から水車のある古い町並みを駆け上がり、陣場上展望台に至るコースが設定され、隣接する長野県から届いた聖火を7人のランナーがつないだ。
第1走者を担った女優の竹下景子さん(67)から聖火を引き継いだ加藤智子さん(82)は、ゆっくりとした足取りで狭い石畳の坂道を駆け上がり、次のランナーに託した。 中継地点近くで応援用の小旗を振って加藤さんの走りを見守った家族は「コロナもあって人が少ないのかもしれないが、こんな間近で見られると思っていなかった」と興奮気味。加藤さんは中津川と同じ東濃地方の多治見市で家族と暮らしているが、1週間前に現地に来て練習していたという。「無事に走り終えてくれてよかった」と笑顔を見せた。 昨夏に生まれた男の子と一緒に出発式を見に来た中津川市在住の同い年の夫婦(27)は「アーチェリーのチケットを持っているので、聖火リレーの出発式も見ておきたいと思い来た」と話した。地元で行われる聖火リレーの話題は「思ったほど出ていない」「五輪をやるのかどうか分からないのが大きいかもしれない」。五輪が今夏に開かれれば「感染対策をしっかりしながら子どもと見に行きたい」と語った。 中津川商工会議所の齊藤隆副会頭は「コロナがなければ、かなり人が見に来たんじゃないか」と残念そうな表情を浮かべた。「コロナの影響で市などでも聖火リレーの盛り上げイベントをやろうと思ってもできなかった。『密』になってはいけないので人に『来て』とも言えない。馬籠にもたくさん来てもらってご飯を食べて帰ってもらえればよかったが、これだけのイベントなのにもったいない」と話した。